「無理をすれば決して続かない」
先生が空手に復帰したのは、それから8年ほど経ってからのことです。その直接のきっかけは、けがが癒えたことではありませんでした。ひょんなことから空手を教える機会があり、教えることを通じて空手の持つ楽しさや意義を見直したのだそうです。それが先生にとって空手との新しい付き合い方を考えるきっかけになり、僕が参加する「光遊会」の源流にもなりました。
「お前たちにビシビシやってもついて来ないからな」と先生は笑っていいます。もちろん厳しさもあります。しかし決して無理や無茶はさせません。何より空手に興味を持って来ている生徒の気持ちをムダにしないよう、あの手この手で目を配っています。生徒の技術に向上があれば見逃さずに褒めてアドバイスを送り、僕が個人練習をサボっているのを見抜けば組手の中でそれとなく気づかせる。
こうした気配りは、若いころの先生の経験が生きているのだと感じます。空手は楽しいものだ。辛いだけのものじゃない。続けてさえくれれば、必ずわかってもらえる。
信念が、指導に現れているのです。無理をすれば決して続かない。それを知っている人の姿がそこにはあります。
先生が僕ら生徒に接するように、僕が僕自身に接すること。それが精神的に健康なまま、充実した競技生活を長く続けるヒントになると考えています。