山倉ダム発電所の構造を見ると、太陽光パネルの周辺にフロート(浮き具)を装着し、ワイヤー状の係留線を水中に伸ばし、アンカーという杭を地中に打ち込んでパネルが流されないようにしている。

 今回用いられていたのは、係留線828本、アンカー420カ所だった。

 そこに設計風速(秒速41.53メートル)を超える風が発生したことで、想定荷重を超えたと見られる。また風や波によってパネルが揺れ動いてかたよった荷重がかかったことで、一部のアンカーが抜けてパネルが押し流され、巻きあがったり折り重なったりしてしまったのが事故の根本原因だ。

 今後、山倉ダム発電所はどうなるのか。京セラTCLソーラーによれば、「早急に復旧したい」としている。

 修復費用については検証中だが、別の水上太陽光発電業者は「おそらく10億円くらいだろう。固定価格買取制度(FIT)の価格が高いから、それくらい投じても十分に投資回収できるはず」と推測する。

 太陽光発電を含む再生可能エネルギーで発電した電気を一定価格で小売電気事業者が買い取るFITが始まったのが2012年で、大規模発電所の当初のFIT価格は40円/kWhだった。投資に対するリターンが大きかったため、新規参入業者が相次ぎ、太陽光発電バブルとなった。

 財源は国民の電気料金に含まれる賦課金であるため、国民負担を減らすべく、国はFIT価格を毎年引き下げている。現在、大規模発電所は入札制になっており、FIT価格は10円/kWh台まで下がっている。

 15年12月に着工し、18年3月に稼働した山倉ダム発電所のFIT価格は32円/kWhで、バブル期に近い価格で権利を取得していた。だからこそ、是が非でも修復して利益を獲得したいという訳だ。

 なお、原因調査がすべて終わるのは来年3月末を予定しており、少なくとも発電所の再開は来年4月以降になりそうだ。