昨年にも同様の事故
生かされなかった教訓

 山倉ダム発電所を再開するためには、何よりも再発防止策が欠かせない。そもそも、この事故を未然に防ぐ方法はなかったのか。

 別の水上太陽光発電事業者に聞いたところ「フロートに注水すれば被害をもっと抑えられたのではないか」と指摘する。

 実は水上太陽光発電所に用いられるフロートには、注水口が付いているタイプがある。そこから1個当たり数十リットルの水を注げば、浮力は落ちるもののパネルが風で浮き上がるのを防止できるのだ。

 ちなみに京セラTCLソーラーが使用していたフロートは、世界大手の仏シエル・テール社製だが、これも注水できるタイプだった。

 実は昨年の台風で、大阪府の水上太陽光発電所でも、山倉ダム発電所ほど大きくなかったものの似たような事故の事例があった。ここは1度目の台風で破損する被害を受けた後、フロートに注水することで2度目の台風による被害は防げた。

 この点を京セラTCLソーラーの広報担当者に聞いたところ「被災した1度目の台風15号では注水していなかった。2度目の大型台風19号では注水して強風対策をした」と話す。

 つまり、過去の事例を踏まえて1度目の台風15号が来る前にあらかじめ注水しておけば、これだけの大規模事故になるのを防げた可能性は十分ある。台風の威力を甘く見ていたミスと言わざるを得ない。

 今回の事故を教訓に、水上太陽光発電で二度と事故が起こらないような再発防止策を作ることが、業界トップメーカーの責務である。