永井CEO自身も「経営を取り巻く環境が大きな構造変化に直面している。先進国の非伝統的な金融政策の正常化は当面見込めない。デジタル技術の革新は、客の行動様式の変化だけではなく、金融の枠組みそのものを変えようとしている」との認識を示す。

 グローバル展開する海外の有力投資銀行は08年の金融危機後、相次いで銀行持ち株会社へ転換。伝統的な投資銀行業務だけでなく、消費者金融や富裕層ビジネス、大企業のグループ内決済業務を一手に引き受けるグローバル・キャッシュ・マネジメント業にも進出している。「野村も単独で生き残るためには、安定的な収益基盤を確立させる必要がある」と、冒頭のメガバンク役員は解説する。

 では、来年4月以降に野村を率いることになる奥田氏が、生き残りのために取り組まなければならない課題とは何か。

非営業出身のトップ就任でリストラ観測も

 まずは野村の屋台骨である国内リテールの立て直しだ。永井CEOの在任期間中、リテール部門の税引き前利益は14年3月期の1920億円をピークに下降基調をたどり、19年3月期は495億円。足元の20年3月期上半期は134億円にとどまる。

 こうした苦境への対応策として、野村は富裕層やマスアフルエント層(準富裕層)など顧客の属性やニーズに対応する形でより専門性の高い担当者を再配置し、店舗の統廃合などを進めている。

 将来の成長への布石として、いわゆる資産形成層の取り込みも急務だ。そのため出遅れていたデジタル対応で、SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)大手のLINEと組み、若年層へのアプローチを始めた。山陰合同銀行と提携したように、地方の金融機関との連携拡大も待ったなしで進めなければならない。

 奥田氏自身も「提携相手は既存の金融業者に限らない。LINEとの協業のように、これからも柔軟に考えていきたい」との方向性を示す。