57歳で新たにクリニックを開業
以来、女性たちの悩みを真摯に受け止める

村崎芙蓉子(むらさき・ふよこ)
女性成人病クリニック院長
1935年生まれ。東京女子医科大学卒業。同大学附属心臓血圧研究所・循環器内科医師、新宿三井ビルクリニック副院長を経て、1992年東京銀座に『女性成人病クリニック』を開業。自身の更年期体験をふまえ、男女を問わず更年期医療専門に取り組む。内科医として初めてホルモン補充療法を始め、カウンセリングに力を入れるなど個人に合わせた医療に全国から来院する患者さんの信頼も厚い。

――当時、日本でホルモン補充というのは珍しかったのでは?

村崎 はい、そうなんです。日本では専門的に診るるところがなかったのですね。それで、悩んでいる女性のために「じゃあ自分でやるしかない」と27年前、銀座に日本で初めて女性を対象にしたホルモン補充療法(HRT)を行なう「女性成人病クリニック」を開きました。

今も銀座コアビルの中で診察していますが、最近では更年期の悩みに応える以外にも、高齢女性を元気にすることも大きな目標となっています。

――それまでは30年にわたって循環器内科で心臓の治療が専門だった先生が、57歳での新たなスタート。すごいバイタリティですね。

村崎 そうですね。振り返ると自分でも呆れてしまいますが、これはホルモン補充療法のエストロゲンの力で、決断力や行動力がアップしていたのだと思います。

エストロゲンは、若々しさを取り戻したり、気力を充実させたりする効果もありますから。

循環器内科の医師をしているときは、体調がすぐれないという中年以降の患者さんの訴えを「検査の数値は問題ないです。よく寝て、よく運動してください」と、通りいっぺんの答えを返していたり、「なんだか気持ちが落ち込む」と言われると、心療内科を勧めたりしていました。

けれど、今思えば、多くはエストロゲンの不足が原因の更年期障害だったのでしょう。医師として情けなかったという反省の気持ちも、クリニックを立ち上げる原動力になりました。

熊本 村崎先生に「やる気」を与えたのは、エストロゲン補充療法だったかもしれないというのは、とても興味深いですね。女性の体内にも、もともとテストステロン(男性ホルモン)があって、そこからエストロゲンから作られているんです。

――村崎先生は、長く続けてらっしゃるエストロゲンの補充療法に加えて、最近はテストステロンの補充療法も始められたと聞きました。

村崎 80歳を過ぎて、エストロゲンだけでは元気不足になってきたのです。特に感じるのが、筋力の衰えですね。今年のゴールデンウィークに、ヨーロッパを旅行したのですけど、帰って来てからどうも疲れが取れない。

旅行中はよかったんですよ。毎日、たくさん歩いて、動き回って。でも帰国してから足に力が入らないし、全身の倦怠感で慢性熱中症のような状態がいつまでも続くのです。それで、これは困ったなと、いろいろ試行錯誤のの末、テストステロン補充を思いつきました。

――それでいかがでしたか?

村崎 効果はてきめんで、筋力もアップして階段もすっと上がれるようになりました。私、若いころからずっと運動が嫌いで、そもそも筋肉があまりないんですね。この年齢になって筋力が弱いと、どうしてもよたよた歩いてしまうので、テストステロンはとても良かったと思っています。