生物とは何か、生物のシンギュラリティ、動く植物、大きな欠点のある人類の歩き方、遺伝のしくみ、がんは進化する、一気飲みしてはいけない、花粉症はなぜ起きる、iPS細胞とは何か…。分子古生物学者である著者が、身近な話題も盛り込んだ講義スタイルで、生物学の最新の知見を親切に、ユーモアたっぷりに、ロマンティックに語る『若い読者に贈る美しい生物学講義』が11月28日に発刊されて、発売4日で1万部の大増刷となっている。

養老孟司氏「面白くてためになる。生物学に興味がある人はまず本書を読んだほうがいいと思います。」、竹内薫氏「めっちゃ面白い! こんな本を高校生の頃に読みたかった!!」、山口周氏「変化の時代、“生き残りの秘訣”は生物から学びましょう。」、佐藤優氏「人間について深く知るための必読書。」と各氏から絶賛されたその内容の一部を紹介します。

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人類は人工知能に滅ぼされる?

 人工知能(Artificial Intelligence:略してAI)という言葉をよく聞く。人工知能が将棋でプロ棋士と対戦したり、大学の入学試験を受験したりして、話題になっているし、多くの企業でも人工知能が導入され、仕事の一部を行うようになってきた。アメリカの有名な新聞「ワシントン・ポスト」では、すでにAIが選挙報道の記事を書いているし、日本の新聞でもAIが活用され始めている。

 一方で、人工知能の発展に不安を持つ人々もいる。近い将来、人工知能が人間の能力を超えるのではないか。そして、人間の仕事は、人工知能などの機械に奪われてしまうのではないか、というのである。

 そういう意見の中でもっとも極端なものが、「シンギュラリティが来る」という意見だ。

 シンギュラリティは技術的特異点と訳されるが、今までのルールが使えなくなる時点のことだ。具体的には「人工知能が、自分の能力を超える人工知能を、自分で作れるようになる時点」のことである。そして、シンギュラリティが訪れれば、人類は終焉(しゅうえん)を迎えるかもしれないというのである。

 もしも人工知能が、自分より賢い人工知能を作れるとする。すると、新しく作られた人工知能は、また自分より賢い人工知能を作る。その新しい人工知能が、さらに賢い人工知能を作る。この過程を繰り返せば、とんでもなく賢い人工知能が、あっという間に出現する。

 仮に、能力が1の人工知能が、能力が1.1の人工知能を作れるとしよう。このサイクルを100回繰り返せば、能力が1万を超える人工知能ができるのである。そうなれば、もはや人類は人工知能に太刀打ちできない。人類は人工知能に征服されて、もしかしたら絶滅させられるかもしれない。そういう可能性もあるということだ。

 思い返せば、私が大学生だった1980年代も、人工知能がブームだった。そして、人工知能はすぐにできて日常生活を一変させる、といった話をよく聞いた。でも、そうはならなかった。だから、まだシンギュラリティも、それほど心配しなくてよいのかもしれないけれど。

 その一方で、すでに起きてしまったシンギュラリティもある。それは、生物のシンギュラリティである。