インセンティブでは人を惹きつけられない!
塩田:経営を始めた最初の頃は「感情価値が大事だ」って思っていたんですよ。でも、それだけで走ろうとするとやっぱりうまくいかないから、合理性があるロジックをちゃんとやったんです。
でも、そっちに振り切ったら、それはそれでうまくいかない。それで「やっぱり感情だよね」って一周回って戻ってきた感じです。
たとえば「ストックオプション出します」とか言って、インセンティブ設計を最適化している経営者は周りにもたくさんいるんですけど、そういうことで人を惹きつけようとしても、2〜3年経つとうまくいかなくなってくる。
山口:そうですね。効かなくなりますよね。
塩田:上場した後、それこそ「人が離れていくフェーズ」ってあるじゃないですか。その瞬間はインセンティブがあるからいいけど、お金を貰ったら離れていくって結構あると思うんです。
だから、僕らは「インセンティブ設計は基本的にしない」という方針にして、「やりたいこと、ワクワクすることがなくなったら、辞めてもいいよね」っていうスタイルで経営しようとしていたんです。まあ、いろいろうまくいかないこともありますけど。
幻冬舎編集者
1985年東京都生まれ。早稲田大学第一文学部卒業後、2010年双葉社に入社。ファッション雑誌の広告営業としてタイアップや商品開発、イベントなどを企画運営。広告部に籍を置きながら雑誌『ネオヒルズ・ジャパン』を創刊しアマゾン総合ランキング1位を獲得。2014年、編集部に異動。『たった一人の熱狂』(見城徹・著)、『逆転の仕事論』(堀江貴文・著)を編集。その後幻冬舎に移籍し、2017年にNewsPicks Bookを立ち上げ、編集長に就任。創刊1年で100万部突破。また1300名の会員を擁する日本最大級のオンラインサロン「箕輪編集室」を主宰。既存の編集者の枠を超え、様々なコンテンツをプロデュースしている。著書に『死ぬこと以外かすり傷』(マガジンハウス)など。
山口:僕も人事の仕事はずいぶんやりましたけど、「(インセンティブを)あげるって予告されて貰う」というのはパワーにならないと感じています。さらに言うと、「貰える」って予測していたのに「貰えない」のが一番ダメージは大きい。
塩田:期待している分、そのギャップが大きいと。
山口:そうです。一番いいのは「貰える」とは思ってなくて、それでも十分報われていて、楽しいって思っているときに、ポッと出される。これはすごいパワーがありますね。
箕輪:すごくわかります。「箕輪編集室」(箕輪氏のオンラインサロン)でも、何かやってもらったとき、最初はたまにお金を払っていたんです。「これだけ働いてくれたから10万円」みたいな。
でも、それやると、よどむんです。ただ楽しくてやってたはずなのに、次からは「えっ、今回はなし?」「今回は10万以上働いたけど……」ってなるんです。
だから、もう「本当にやりたいってときしか、手を挙げるな」ってことにして、誰も手を挙げなかったら、そのとき普通に仕事として発注しています。
塩田:なるほど、それすごくいいね。
箕輪:そうじゃないと、マジでよどむんですよ。「あんだけ楽しくやってたのに」みたいなね。