世界で通用するプロダクトを作るためにシリコンバレーへ

朝倉:小林さんは、Chompを始める前にも、いくつかの会社を立ち上げていますよね。今までの経緯を聞かせてもらえますか?

小林:スマホ向けのネット広告配信会社「ノボット」を2009年に設立し、2011年7月にmedibaというKDDIの子会社に売却しました。その後2年ほどKDDIのグループ会社で社長を務め、2013年末に米国に渡りました。

朝倉:ノボットをイグジットした後に、なぜシリコンバレーに拠点を移そうと思ったのですか?

小林:ノボットを設立した時にも、事業を世界中に展開したいという思いがありました。ですが、当時、モバイルの広告業界ではGoogleが非常に強く、ノボットはGoogleにはどうしても勝てませんでした。それで結局売却したのですが、次に何か事業をやる際には、世界中で使われるプロダクトを作りたいと強く思い、サンフランシスコに渡りました。

朝倉:世界に通用するプロダクトを作ろうと思うと、サンフランシスコがいいのではないかと考えたんですね。

小林:そうですね。今ですと、シリコンバレーの他にもインドや中国がいいかもしれません。コンシューマープロダクトを多くの人に使ってもらうようするためには、ネットワークエフェクト(ネットワーク外部性)という、ユーザーが増えれば増えるほどプロダクトの価値が増す、という仕組みを活かすことが重要なのですが、ネットワークエフェクトは人の繋がりや言語で断裂されやすいんです。

また、日本でプロダクトを作ろうとすると、当然ですが、まずは日本でプロダクト・マーケット・フィットを合わせに行かないといけません。しかし、日本は他の国と異なる点が多いため、多国展開する際には、他の国で再びプロダクト・マーケット・フィットを合わせる必要がでてきます。これらの理由から、日本から他の国に展開していくのは難易度が高いと感じました。

朝倉:日本でプロダクトが成功して、上場するようなフェーズになったとしても、それを海外に広げようと思うと、途端にシード期のスタートアップに逆戻りしてしまうということが起こりがちですもんね。

小林:よくある失敗事例は、日本でプロダクトが成功して、それを海外で広める時に、マーケティングのみで展開していこうとするケースだと思います。しかし、プロダクト・マーケット・フィットがない状態でマーケティングに予算を投じても、底に穴が空いているバケツに水を注ぐように、既存のユーザーを失い続けます。そのような状態では、ユーザーを持続的に増やしていくことが難しいんです。

マーケティングももちろん重要なのですが、それ以前に、プロダクトを一度見直し、きちんとその国の人に合わせて作り直していくことが重要です。プロダクト・マーケット・フィットしていて、ユーザーがそのプロダクトを好きになってくれているからこそ、自分の周りの人を新規ユーザーとして招待してくれたり、長期的に使い続けてくれる状態になります。そうなってから、マーケティングに予算を投じることで、グロースするのが望ましいのです。

朝倉:米国は広いですが、シリコンンバレーでプロダクトを作っていたら、西海岸に最適化し過ぎるものになったりはしないのですか?

小林:ユーザーがカルフォルニアに偏らないように、米国全地域に少しずつ広告を打ち、エンゲージメントが高く、リテンション(継続利用)してくれるユーザーを見つけていき、プロダクトを改善するためのデータを蓄積しています。Chompは外食に関するプロダクトなので、都市圏が中心ですが、西海岸だけに偏らないように設計しています。