営業利益は2社ともマイナス

 メルカリは、広告宣伝費を193億円投じて営業利益がマイナス121億円、Sansanは広告宣伝費を28億円投じて営業利益がマイナス8億円です。下図を見てください。

メルカリはなぜ、営業赤字でも「宣伝」にお金をかけるのか?

 多額の広告宣伝費をかけていることが原因なので、広告宣伝費を抑制すれば黒字化は十分可能なはず。なぜ、赤字覚悟で多額の広告宣伝費をかけているのでしょうか。

 その理由は、両社のビジネスモデルの特性から読み解くことができます。両社に共通していえるのが、ネットワーク外部性が強く働くビジネスだということです。

 ネットワーク外部性とは、同じ商品・サービスであっても、利用者の数が増えれば増えるほど、その商品・サービスの利用価値が増加するという経済メカニズムのことを指します。

 ネットワーク外部性が働く代表的なサービスとして挙げられるのが「電話」です。下図を見てください。

メルカリはなぜ、営業赤字でも「宣伝」にお金をかけるのか?

 電話は、携帯電話を含めて世の中にほぼ普及しきっているサービスですので、イメージしにくいかもしれませんが、仮に電話がない世界をイメージしてください。

 ある人が電話を発明し、そのとき1人しか電話を持っていなかったら、その電話自体にはなんの価値もありません。誰かと通話ができるから電話としての価値があるのです。電話保有者が2人だったら、特定の1人としか通話できません。

 しかし3人が電話を持っていたら3パターン、4人だったら6パターン、5人だったら10パターンの利用ができます。100人の場合は、なんと4950パターンとなりますので、2人の場合と比べると人数が50倍に増えただけで、サービスの価値が4950倍に膨らむのです。

 このように、普及すればするほど加速度的に利用価値が高まっていくのは、ネットワーク外部性による効果です。