メルカリとSansanのビジネスモデル
メルカリはフリーマーケットアプリなので、売り手と買い手、双方がいて初めてサービスとして成り立つビジネスです。買い手の立場からすれば、出品者や出品数が多ければ多いほど品ぞろえが豊富なので、利用価値が高いサービスといえます。
売り手としても、ユーザー(売り手から見れば潜在顧客)が多ければ多いほど売れる可能性が高まりますので、売る場所として価値が高いと感じるでしょう。そして、ユーザーの誰しもが出品者にも購入者にもなれるサービスですので、ネットワーク外部性の威力が遺憾なく発揮されます。
Sansanは、社員が持っている大量の名刺をデータベース化して社内共有することで、顧客管理や営業支援につなげるサービスを提供しています。データベース化される名刺の数が多ければ多いほど、価値が高まります。Sansanが提供する個人利用向けサービス「Eight」では、自分の名刺データをアップデート(昇進、転職など)すると、自分とつながった相手にもその情報が更新されるしくみになっているので、社外の利用者も増えれば増えるほどサービスそのものの価値が向上します。
例えば、製造業のように製品を作って販売するだけの、消費者との一対一の関係のビジネスの場合は、ここまで広告宣伝費をかけることはできないでしょう。
メルカリもSansanも、ともにネットワーク外部性が強く働くサービスだからこそ、多額のプロモーションコストをかけて普及活動を行っているのです。非常に合理的な施策といえます。
しかし、広告宣伝費に多額の資金を費やすことが重要だとしても、青天井のようにどんどんお金を使ってしまったら、いつしかキャッシュは底をついてしまいます。メルカリもSansanも、企業規模としてはまだ小さいのにもかかわらず、どこからそのお金を捻出しているのでしょうか。
おそらくベンチャーキャピタルなどの投資家からの出資が大きいでしょう。企業の目利きであるベンチャーキャピタルは、今は赤字でも将来大化けする有望なベンチャー企業を発掘し、株式と交換に多額の資金を出資します。
有価証券報告書に記載の「連結株主資本等変動計算書」によると、メルカリは、2017年度に570億円、2018年度に106億円もの新株発行をしています。
Sansanも、2017年度に42億円、2018年度に30億円もの新株発行をしています。株式発行の諸費用が差し引かれるため、調達金額とイコールではありませんが、おおむねこのくらいの資金を手にしたことがわかります。メルカリもSansanも、このお金を原資として、多額のプロモーション活動ができているのでしょう。