宣伝費率は低下傾向。なぜ?

 両社の売上高広告宣伝費比率の推移を見てみると、どちらも全体的に低下傾向にあります。下図を見てください。

メルカリはなぜ、営業赤字でも「宣伝」にお金をかけるのか?

 一般に、売上高広告宣伝費比率は、事業のライフサイクルの経過にしたがって低下する傾向にあります。

 導入当初のフェーズでは、売上に結びつきにくいため、相対的に広告宣伝費の割合は高くなります。しかし、ここで広告宣伝費をケチッてしまうと、認知度が上がらず、サービス自体の価値の上昇が停滞してしまいます。両社とも、しかるべきタイミングで、広告に惜しみなく資金を投下した成果が、売上高に反映され、相対的に広告宣伝費の割合が低下しているのでしょう。

 メルカリは、今や押しも押されもせぬフリマアプリの代表格となりました。一方Sansanも、名刺管理サービスではすでに国内ナンバーワンのシェアを握っています。どちらも普及期は過ぎて、黒字化のフェーズに進もうとしているのかもしれません。

 事業のライフサイクルが成長期から成熟期に移行すれば、多額の広告宣伝費をかけなくとも一定の売上をあげることができます。

 上場のタイミングとしては、メルカリのほうがSansanよりも1年ほど早いですが、メルカリは2013年設立なのに対して、Sansanは2007年設立です。Sansanのほうが事業として成熟しているため、メルカリよりも売上高広告宣伝費比率が低いパーセンテージで済んでいるといえます。

 また、メルカリは、立ち上げ間もない米国事業やメルペイ事業の広告宣伝にもキャッシュを投下しています。つまり、刈りとりフェーズの国内事業だけでなく、種まきフェーズの米国事業およびメルペイ事業が並行して走っているため、全体として売上高広告宣伝費比率が高い状態になっているといえるでしょう。