今回の臨時株主総会で内田新社長による日産再生が本格スタートすることになったが、株主からの質疑は、怒号も飛び交うほどの厳しいものとなり、議長である内田新社長も立ち往生するほどの異例なものとなった。

 筆者は、この日産臨時株主総会に出席し、2時間40分に渡った株主総会を現場でつぶさに見聞きしてきた。その全容を明らかにすることで、内田日産体制の経営課題、今後の方向を洗い出してみたい。

経営への不信から
厳しく叱声する光景

 そもそも今回の臨時株主総会の議案は、内田新社長を含む取締役4人選任の件だけで、本来はスムーズに進行されるはずのものだった。

 経緯を説明すれば、日産は昨年6月の定時株主総会後、ゴーン元会長の不正や完成検査不正を防げなかったガバナンス・コンプライアンス改善のために、指名委員会等設置会社に移行した。当時の西川前社長は「2~3年で日産をもとの軌道に戻す」と引き続き日産のトップとしての意欲を示し、すでに7月から社外取締役が大半を占める指名委員会で次の社長候補選びが進んでいた。

 その結果、指名委員会は内田誠専務執行役員を選んだ。そして、12月1日に内田社長が就任したものの、取締役は株主総会の承認事項であるため、今回の臨時株主総会が開催されたのだ。

 だが、いざ開催してみると冒頭の通り、最近の日産の経営状況が著しく悪化していることもあり、株主の怒りが爆発した。

 総会の冒頭、内田新社長は初めて議長として壇上に立ち、内田新執行体制への移行の説明と日産の置かれた状況、今後の方向について自ら説明した。その後、株主サイドからの質疑が行われたが、24人もの株主から質問が行われ、経営への不信から厳しく叱責する光景が多く見られた。

 内田議長は、まず今回の議案の取締役4人選任の件について、

・取締役ティエリー・ボロレ氏は2019年11月11日付けで辞任され(ルノーCEO退任)、西川廣人および山内康裕の両氏は本総会終結の時をもって辞任される。

・日産は19年12月1日付けで新たな執行体制での運営を開始。これらを受け、また業績の回復及びアライアンスを含む経営体制を強化するため、取締役を1人増員し、取締役4人の選任を議案とする

 といった旨を述べた。