近年大きな労働問題になっているのが、パワハラなどのハラスメントだ。2019年5月、企業・職場でのパワハラ防止を義務づける「改正労働施策総合推進法」(いわゆる「パワハラ防止法」)が成立。それにともない、大企業では2020年6月1日から、中小企業では2022年4月1日からパワハラ防止のための措置が義務づけられる。企業のハラスメント問題を数多く手がけている労務問題のプロ弁護士・向井蘭氏の最新刊『管理職のためのハラスメント予防&対応ブック』から、企業のハラスメント対策のポイントを解説する。

「時代錯誤な上司」がするパワハラPhoto: Adobe Stock

 前回の連載「パワハラする人は出世しやすい?」では、パワハラ行為者の13タイプのうち、「社長重用型」と「信念型」を解説しました。

 今回は、「部下いびり型」と「被害者型」を解説します。この2つは、社会が変わったことに気づいていない、令和の時代を昭和の感覚で生きている人に多いタイプです。

ネチネチした指導をする
「部下いびり型」

《特徴》
 行為者本人は熱心に指導をしているつもりです。しかし、部下が泣き出したり、激しく衝突したりして、最悪の場合、退職してしまいます。

 行為者本人は真面目に、かつ長く同じ仕事をしていますから、ノウハウや経験が集中します。中小企業などで、特定の分野の仕事を長年仕切っている「プロ」に多くいるタイプです。

「時代錯誤な上司」がするパワハラ「部下いびり型」(『管理職のためのハラスメント予防&対応ブック』より)イラスト:田渕正敏

《対処法》
 自分は正しいと思っていますから、不用意に注意したり、いきなり配置転換したりすると、猛烈に反発します。労働組合に駆け込んだり、訴訟になるケースも多いです。
 会社の対応として大事なのは、相手を承認することです。「あなたの貢献度はとても高い」「部下指導で言っていることも正しい」と伝えた上で、「相手の年齢や能力などを配慮して指導してほしい」と言います。そして「今後も退職者が続くようであれば大きな損害を受けるので、あなたの配置転換を考えざるをえない」と伝えます。

 見せかけの承認はすべきではありません。人生経験が豊富な人が多く、逆に反感を買うことになります。