――メルカリや楽天といった他のネット販売との違いは何ですか。

 メルカリや楽天で行われている生産者と消費者のコミュニケーションのほとんどは、値下げ交渉だと思います。買いたたかれてきた生産者がそういう世界に入ったら、さらに疲弊するだけです。値下げ合戦で1次産業は衰退してきたので、同じことをやっちゃいけない。

 メルカリや楽天と違うのは客層です。ポケマルには、安心安全で確かな食材をプロの生産者から買いたいお客さんが来ています。なので、良いものを適正価格で買う傾向が強い。一方、メルカリや楽天はプロの生産者だけじゃなくて、素人も出品しています。おまけに生産者の顔が見えないこともある。こういう事情があるので、ポケマルに登録している生産者から言われるのは「客層が本当にいい」ということです。

 メルカリのすごさは、リユースを促進して環境問題に貢献していることです。家に余ってるものを融通し合おうというのは素晴らしい。だけどポケマルが扱うものは余ってるものじゃなくて、何カ月もかけて育てた生き物というか、命なので、安ければいいっていう世界とは真逆のはずです。なので、メルカリみたいなCtoC(Consumer to Consumerの略で、企業ではなく人の間で行われる取引)の世界がある一方で、直接つながるからこそ価値が伝わって適正価格で買ってもらえるポケマルの世界も実現できるのです。

――革新的な野望をお持ちですが、既存の流通の農協とか、卸、仲卸などの皆さんは高橋さんにどういう反応をしていますか。

 生協とか農協から講演してくれって、結構言われますよ。皆行き詰まってるんですね。1次産業という小さな世界で、農法の違いだとか小さなことでけんかして、原理主義者たちが小さな違いを乗り越えられずに、結局は体制派にのみ込まれるってパターンが繰り返されている。「そんなことしてる場合じゃねえぞ」と言いたい。

 農協でも、幕末の薩長みたいに改革派の組合長はいます。そういう組合長とは議論できる。卵は外から突いてるだけじゃ割れなくて、内から突く人がいて初めて割れるんです。どの分野にも仲間がいるので、そういう人たちとつながるのが大事だと思ってます。

 ネット通販サイト、食べチョクは競合といわれるけど違います。食べチョクとポケマルが押さえてるシェアなど、食品流通全体からしたら鼻くそみたいなものです。

 食べチョクとポケマルだけが頑張ったってしょうがない。生産者と消費者がつながる世界がもう一つあった方が拡大するわけだし、お互い切磋琢磨するということで、もうちょっと俯瞰して見ないといけません。

――生産プロセスの情報を伝える力が、農家だけじゃなくてスーパーや外食にもあればもっと変わるでしょうね。

 最近、茨城県で「これから少量生産だ」って言ってるスーパーがはやっているらしい。品切れっていうのはスーパーでは悪ですが、ポケマルではごく自然なことです。物不足と貧困の時代には食料の安定供給が求められ、安く食材を国民に分配することが1次産業と農産物流通の使命だった。でも今は皆メタボだし、おなかがいっぱいなんです。飽食の時代に安定供給だなんて言ってたら自分の首を絞めることになる。安定しなくていいし、品切れでいい。大事なのは希少価値です。唯一無二だといえるかどうかなんです。

 希少性という意味では、旬のものを出してくことが大事ですが、それだけじゃない。僕ら消費者はある程度の品質になるとそんなに味の違いは区別できないです。だけど作ってる人間の顔は全部違う。その人が1次産業に就くまでの人生もみんなバラバラ。そういった違いを伝えることで差別化できます。

 ポケマルだけがそういう世界をつくるわけじゃなく、スーパーなど既存の流通もやろうと思ってくれれば、大きなことができると思う。農協や漁協だってそうです。

 だって漁業も改革派の組合長がいるところは、若いやつに「全部共販で問屋に売るぞ」と言っても誰も付いてこないから、漁獲量の1~2割の販路は直販でもなんでも自由にやれと若手に任せています。若手もお客さんと直接交流してイベントでカキを食う会をやったりして楽しそうにしていますよ。

 でも、いずれにしても直販だけでは成り立たない。大規模流通も量をさばくためには必要です。ただそれと直販と、両方があることがすごく大事だと思います。

 生産者がお客さんと直接つながると、例えば自分の販路の3%しか直販がなくて、残りの97%は農協出荷だとしても、農協の売り方に不満が出てくるんです。「何やってんだ」「もっとこうしようよ」って。つまり農協や漁協の組合員の頭の中が変わっていけば、最終的にこの人たちに突き上げられて、組織が変わらざるを得なくなる。

 農協や漁協の組合員にも、売ることを考えてない人はいる。それは彼らが悪いわけじゃない。お客さんに接したことがなければ、そうなります。でも、お客さんに触れた途端に自分たちの価値に気付き、売り方に気付き、突き上げができるようになる。意識改革が、地殻変動につながってくわけです。

――卸売市場法が改正されましたが、結局何も変わってない。規制をちょこちょこ変えるより、生産者が儲かって意識を変えること、民間の事業者が変わることが本質なのでしょうね。

 食のCtoCの未来を、僕らが想像できるはずがないと思っている。CtoCの面白いところは、そこに参加した人たちが、それを運営するプラットフォーマーが想像する以上のことを勝手に考えて、始めることだと思う。それこそがCtoCの素晴らしさです。この場を利用して、悪いことを考えるやつも出てきますが、個と個がつながったときに生まれるアイデア、発想っていうのはヤバイです。

 もう一つのCtoCの本質は個の再生です。今の生産者を見てると「○○産」と産地で商品が表示されるのが嫌なんです。お客さんも一緒で、今までマーケティングの対象で、チラシを配られてきて、広告の波にもまれ、大衆消費社会に沈んでしまったんだけど、そこから抜け出たいんです。今までの消費社会で、個は数値化され類型化された、いわば記号だったんです。

 ポケマルを見てると、お客さんが個として立っている。生産者にありがたがられて、「私じゃなければいけない感」を味わっている。生産者とお客さんが実の親子よりもしゃべってるみたいな状態になるのは、個として主役になってるからです。だから利用者から一番聞こえてくる声は「楽しい」なんですよ。生産者も消費者も楽しい。1次産業の課題解決ってことにとどまらずに、新しい社会をつくってるような感じがしますね。