シリコンバレーではタームシートを交わした後になって投資が頓挫する事例が話題になっています。今回は、スタートアップ経営者側の視点から、資金調達を成功裏に終えるためにはどのような心構えで臨むべきかについて考えます。

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資金調達プロセスは着金を確認するまで終わらない

朝倉祐介(シニフィアン共同代表。以下、朝倉):先日、ソフトバンク・ビジョン・ファンド(以下、ビジョンファンド)が、投資検討を進めていたいくつかのスタートアップへの支援を立て続けに打ち切っていたというニュースが報じられました。

詳しくは記事を読んでいただければと思いますが、タームシートを取り交わし、その上で投資しないという判断を何件か立て続けに下したということに対して、シリコンバレーのVCを中心に批判的な意見が出ているようです。

今回はスタートアップ経営者・起業家の立場から、資金調達のプロセスにどう臨むべきかについて考えてみたいと思います。

注釈を加えると、タームシートとは正式な投資契約を締結する前に交わす、投資の主要条件をまとめた概要書のことです。まずはタームシートのやりとりを通じてメインの論点についてスタートアップと投資家が交渉を行い、重要な論点に関しておおむね合意したうえで、契約書のドラフトを相互に修正するという進め方が一般的です。

個々のケースで事情は異なるのでしょうが、基本的にタームシートはあくまでも想定される交渉条件について記載されているものであり、正式な契約書ではありません。したがって、一般的に法的拘束力は有しません。そのため、タームシートを交わしたからといって、資金調達は完了したものと会社側が安心してしまうのは、随分と危ういことだと思います。

小林賢治(シニフィアン共同代表。以下、小林):今回のような事例が特殊事例なのかというと、決してそうではありません。ビジョンファンドは規模も大きく、目立ちやすかったために話題になっていますが、タームシートを交わした後に投資が反故になるケースは他にも結構あるのが実情です。

例えば、リーマンショックのようなマクロレベルで情勢の変化が起きた際や、投資を行う側の企業に不祥事等何らかの大きな変化が起きた場合であれば、投資プロセス自体がストップするといったケースは過去にも見受けられます。

朝倉:タームシートに限らず、本契約書であっても、投資の実行日までに問題が起きた場合には投資を取りやめることが記載されていることが多いですよね。

海外の事例ですが、契約は締結されていたにもかかわらず、投資する側の企業に不祥事があり、大混乱の末にラウンドそのものが取り消されたということも、知る限りあります。この場合、スタートアップ側には特段の落ち度はなかったのでしょうし、不運としか言いようがないのですが、それでもこういった事態が起きてしまうこともあるわけです。

小林:着金を確認するまでは、気が抜けないということが如実にわかるエピソードですね。

朝倉:「おうちに帰るまでが遠足です」という常套句と同様、実際に銀行口座に入金がなされ、それを使える状態であることが確認できるまでは、資金調達が終わったと思わないほうがいいということですね。こうした教訓をふまえて、起業家側はどう備えるのがいいのでしょうか?