沖縄のパークを日本文化を世界へ
売り出すプラットフォームに

――USJ時代からの悲願である、沖縄のテーマパークプロジェクトもありますね。

森岡 沖縄プロジェクトを通じて実現したいのは、テーマパーク・エンターテイメントで世界中の人を喜ばせてお金を稼ぎ、日本にお金を持って来る、日本を豊かにする構造をつくりたいというビジョンです。

沖縄はその1号店なんですね。沖縄のパーク一つをつくる執念ではなくて、その先の未来を私は描いています。その構想に関しては、私の1冊目の本『USJのジェットコースターはなぜ後ろ向きに走ったのか?』の中に、7年前に書いています。これはあの本の中で書いた「3段ロケット構想」の3段目のロケットなんですね。

我々の持っている集客施設を超効率的に経営できるノウハウを水平展開して、それで稼ぐ構造をつくって、日本の税収を支え、日本の雇用を支えるというのが、私のビジョンだった。ユニバーサルがそれをやらないと決めたので、辞めた後の私がそれを実現しますと。

1号店がどうなるかまだわからないうちに、大言壮語しすぎるとよくないのですが…沖縄の良さを軸にして、大自然とのインタラクションの中で、本能を揺さぶる大興奮を便益にして売って行くパークをつくろうと思っています。この1号店が成功した暁には、沖縄のパークは実はまだ半分も土地を使ってないので、第2パークを隣につくることもできます。そして2号店、3号店、4号店と、同じようなコンセプトで、どんどんアジア各国を中心に展開できると思っています。

その複数のパークを、成長するアジアの構造に乗せるんですよ。アジアは富裕層がどんどん生まれて来て、ライブ・エンターテイメントの需要もどんどん生まれてくるわけです。5Gに象徴されるようなデジタルが流行れば流行るほど、ライブをみんな求めるようになる。生の感動がよりハイライトされる時代がやって来る。これからどんどん大きくなっていくアジアのライブ・エンターテイメント需要を日本の企業がつかまえるのです。

この需要が伸びていく構造に乗っかって、2店目、3店目、4店目、5店目を一気に展開していく。そのプラットフォームができたならば、日本に生まれて来た数あるクリエイティブの傑作を使って、世界、とくにアジアを中心とした人たちを感動させる構造をつくりたい。ディズニーのコンテンツを使って、アメリカ人が日本人を感動させているのが当たり前という今までの歴史を変えたい。ディズニー、ユニバーサルにも対抗しうる第3勢力を、成長するアジアから生み出したい。日本のコンテンツを使って攻めるプラットフォームをつくりたいのです。たとえば、サンリオさんとか、藤子不二雄プロダクションさんとか、スタジオジブリさんとか、手塚治虫プロダクションさんとか、カプコンさんとか、任天堂さんとか。日本には天才のコンテンツがいっぱいあるんですよ。まだ十分に活用されていない傑作が。

協力してくださる方々、同志を求めていって、そういう素晴らしいコンテンツを輸出するプラットフォームをいつかはつくりたいんです。将来、日本は、ピリリと光る豊かな小国にならねばならない時代がいずれ来ます。そのときに必要なのが、文化の力、ソフトパワーです。文化による正当性の獲得を支える産業の構造をつくらないといけない。

日本のコンテンツを世界市場で直接売れるプラットフォームの構築がすごく重要だと思います。誰かがこれをやらなければいけいない。我々みたいに何も持たない人間がゼロから始めるのは、実は壮絶な旅なんです。でも我々は、お金はないけれど、この領域における情熱とノウハウは誰よりも持っている自負がある。だから日本のために、何よりも我々の挑戦のために、それをぜひやってみたい。ものすごくハードルが高いからこそ、やる意味があると思ってます。