プラン変更への抵抗を
小さくするには

 ではスムーズなプラン変更のためにはどうすれば良いのでしょうか? 

 まず先に述べたように、絶対に正しい方法はなく、状況と目的に応じて有効な方法は変わるという「方法の原理」を共有することです。そのうえで、最初からプランAが機能しなかった、あるいは状況が変わって機能しなくなった場合のプランB、プランC、プランDもあらかじめ準備しておき、それらをセットで作戦を立案しておくのです。

 そして、状況aで機能していたプランAが、状況がbになったときに機能しなくなったならば、その状況で機能するプランBに移行すればよいのです。方法の原理によれば、状況と目的に応じて方法の有効性は変わるのですから、プランAや前任者を否定する必要がなく、プランAにつぎ込んだコスト(労力、費用、時間)が埋没コスト化することがありません。「状況が変わったためプランBに移行しましょう」というだけのことです。

 そうすることで、プランAがうまくいかなくなったときの各所との「調整コスト」が最小化され、状況の変化を見定めながら迅速にさらに有効な方法にシフトしやすくなります。

 このようにプランAのみでなく、様々な状況や進展に応じた、プランB、プランC、プランDと、ワーストシナリオを含めた事態を想定しあらかじめ用意しておけば、状況が変わったときには、「方法を変える」だけでよいのです。前任者や前のプランの否定という形になりにくく、またプランAにかけてきたコストを無駄にしてしまうという「埋没コスト」にとらわれたプラン変更への抵抗も生じにくくなります。

 ただし、現象は常に想定を超えてくる可能性があるため、BもCもDも機能しないときは、あくまでも方法の有効性は状況によって変わるという方法の原理を軸として、その状況を打開する新たな方法を生み出して、対応していく必要があります。

 危機のマネジメントでは、限られた時間の中でいかに適切な意思決定を重ねていけるかが鍵になります。方法の原理に沿った、しなやかで速やかな方法の選択、創出、実施こそが、危機のマネジメントに求められるのです。

(エッセンシャル・マネジメント・スクール代表 西條剛央)