在宅勤務のメンタル危機#5Photo:PIXTA

在宅ワークに欠かせないSlack(スラック)やウェブ会議などの各種ツール。だが、リアルな対面でのやりとりがないこれらのツールは、使い方を誤ると思わぬトラブルやストレスにつながる。特集『在宅勤務のメンタル危機』(全6回)の#5では、在宅ワークだからこそ注意すべき伝え方のポイントとコミュニケーション術を考えてみよう。(ダイヤモンド編集部 鈴木洋子)

便利なはずのウェブツールでストレス爆発!
Slack恐怖症、Zoom疲れはこれで回避せよ

 緊急事態宣言で在宅勤務となった上杉謙一さん(仮名)。職場の同僚・上司とSlack(スラック)を使いながら仕事を始めて1カ月が経過した。今日もノートパソコンから、ひっきりなしにキツツキのようなSlackの新規メッセージの通知音が響いてくる。

“カカッ”
石田「@上杉さん お疲れさまです。例のウェブ会議の予定、早く決めないといけないんでなるたけ早めで返事ください。お忙しいかと思うんですけど、前回も返事待たせたので先方ちょっと怒り気味なんですよね……。決めたらみんなに内容連絡してくださいね、お待ちしてます」

(例の……って、何の会議で、いつまでに返事しなきゃならないんだよ?で、みんなって誰と誰?)

“カカッ”
真田「@上杉さん@武田さん@堀田@服部 @小山田 @石田 次期営業会議に提出しようと思ってる企画です。こう言っちゃなんですけど自信作です!ぜひ皆さんからのコメントお願いします。これはご存じの方も多いかもですけど、僕が昨年企画部から異動してきた当時から温めてきたもので、実はちょっと恥ずかしいんですけど妻からのちょっとした一言がきっかけになったものでして……(以下数十行文章が続く)」

(……えっと、これ何、全員に送ってるけどこの散文に何かコメントを求めてるの?というかどこからが企画書なの?これ、俺も返事しなきゃならないの?)

“カカッ”
北条「午前中に送った話、早く返事ください」

“カカッ”
北条「あと伝票の記入漏れ多いです」

“カカッ”
北条「それから」

“カカッ”
北条「この前もらった企画書も意味不明です」

“カカッ”
北条「いいかげんベテランなんだから、ちゃんとしてくださいね。他の人はみんなできてます」

(あーもう、だから何の話だよ、急ぎだったらいつまでってちゃんと書けよ……。この前の企画書ってどの企画書の話してんだ?なんでこんな頭ごなしに怒られなきゃならないんだ、俺?あとこの送り方むっちゃイライラする……決定キー力強く押し過ぎだろ!あれ、携帯に留守電入ってた)

「新しい要件は、1件です、ピー」

「おーお疲れさん、織田です。例の会議の予定ファイル、メールで送っておいたから。悪いけど代わりにアップしといてもらえる?Slackの使い方よく分からないんだわ、ガハハ。んじゃ、よろしくねー」ガチャ。

(だからこれどのスレッドにアップして、誰と誰に送るんだよ!あと例の会議ってなんの会議だよ、それからいいかげん使い方覚えろよ!俺は秘書じゃねえ!)

“カカッ”
堀田「@上杉さん@武田さん@小山田 Slackって仕事はかどって最高ですよねー!そういえばこの前、春に歓迎会やった目黒のフレンチでテイクアウトが始まったことを発見しまして!!!今日のランチはそこから取って、家族で食べました、超おいしかった~みんなにも絶対お薦めです!!(スマイルマーク)(ごちそうマーク)(写真)」

(堀田!雑談をこんなにいっぱいメンション付けて仕事のスレ内で送んなよ!忙しいのに、こいつ全く空気読めねーのか!)

 その後も大量のキツツキに襲い掛かられるかのごとく、絶えず通知音は鳴り続けた。上杉さんはうつろな目で天を仰ぎながら、そっとログイン状態を「離席中」にした。

 通知音を聞くと体がびくっと大きく動くようになってしまったし、胃もキリキリと痛い。ああ、早く会社に戻って仕事がしたい。こんな状況、あと1カ月も耐えられる気がしない――。

 ちなみに、上杉さんの同僚も上司も、別に上杉さんにケンカを売っているわけではない。みんなそれぞれ仕事を進めようとしているだけなのだ。どうして、こうなってしまったのか。