わが社の緊急事態宣言は
2月中旬に発令された

 僕は2月17日に、ブシロードの緊急事態宣言を出したんですよ。全体朝礼で「This is war、戦争だ」と宣言して、役員にもどういう事態になるか説明した。その週末のイベントも全部中止です。

 それから、当社の緊急事態宣言を出したその日に、ノートパソコンを秋葉原と新宿に買いに行かせました。在宅ワークで必要だから、これから絶対に手に入りにくくなると思ったんです。在宅ワークと時差通勤はすぐに取り入れて、宣言直後には社員の2割ぐらいが在宅ワークになりました。政府が緊急事態宣言を発令したときには8割ぐらいが在宅勤務になっていましたね。

木谷高明きだに・たかあき/1960年石川県生まれ。大学を卒業後、山一證券勤務を経て1994年にブロッコリーを創業。2007年ブロッコリーを退社し、ブシロードを創業。2019年にマザーズ上場。2017年10月に代表取締役を辞任、現在はデジタルコンテンツ事業および広報宣伝を管掌する取締役としてコンテンツ開発の最前線に立つ。 Photo:bushiroad

――なぜそんなに対応が早かったのですか。

 今のような事態になると思ったからです。僕は1月半ばから「中国であんなにはやって、日本ではやらないはずがない」と恐れていましたよ。これだけ中国から人が来ているのに、日本に広がらないはずがないでしょう。

――リスク感覚が敏感だった。

 例えば、もしタイタニック号に乗っていたら、乗客は「この船が沈むはずはない」と思うものです。人がいっぱいいるから。でも小舟だったら、「死んでしまう」と思いますよね。しかし結果としてどちらに乗っている方がリスクは大きいか?分かりませんよね。

――そしてブシロードは小舟だと。

 小舟だというより、「小舟であるべき」だと思っています。大企業だろうが、小企業だろうが、リスクに敏感じゃないとやっていけない。

 新型コロナのリスクを見通す上で、僕のシナリオは3つありました。通常のインフルエンザのように4月になったら急速に収まっていくシナリオ。次が、高温多湿の梅雨で収まるシナリオ。そして最悪のシナリオがスペイン風邪と同じように18カ月続くというもの。来年の夏ぐらいまでは、打撃を受けることになります。

 当初は3つのシナリオの確率をそれぞれ3分の1ずつと考えて動いていました。でも現状では、3番目のパターンになりそうですね。夏場に若干は収まると思いますが、結局は18カ月ぐらい続きそうです。最悪の18カ月シナリオに備えるために、僕は銀行借り入れについても1月25日ぐらいから役員会で「どんな理由を付けてもいいから、金を借りよう」と言っていました。