スタートアップ・エコシステム発展のための合従連衡
朝倉:先日発表された、メルペイによるOrigamiの買収も話題になりました。報道を見る限り、このディールはOrigamiにとってはあまり喜ばしいイグジットではなかったのではないかといった言説もありますが、いずれにせよ、先ほどの例に加え、同一業界にいた会社が一つになるという事例が日本でも増えつつあると言えるでしょう。
小林:このディールに関して、「Origamiに対する救済措置である」、「Origamiが激しいスマホ決済事業の競争に耐えきれなかった」といった言説が見受けられますが、実はこの2社は完全な競合かというと、そうではない気もします。業界内での両社の立ち位置は少し異なります。
そういう意味では、Japan TaxiとMOVの事例とは異なり、直接競合の吸収というよりは、ビジネス上で補完関係のある2社の統合、と見るべき事例ではないかと思いますね。
村上:「スーパーアプリ」の必要性が叫ばれる中、広い意味で競合を見渡して、直接競合ではない、補完性のある競合同士が再編することにより、プラットフォーマーとしての競争力を高める戦略に、今後注目すべきだと思います。
このあたり、スタートアップの競争戦略については以前のポストで詳しく話した通りですね。
朝倉:日本のスタートアップは、同一業界に分散しているプレイヤーが非常に多い。一方で、M&Aのイグジット件数はあまり多くありませんから、IPOする、ないしは、経営状況が芳しくなく、徐々にリビングデッド状態になっていく。この2つがよく見られるパターンだと思います。結果、上場企業でも、同一業界に似たような会社が多い、といった状況が生まれていますね。
村上:スタートアップに流入する資金が増える一方で、投資家視点から見ると、マーケットに分散した競合同士が同じようなプロダクトを作って、同じユーザーに向けたマーケティングコストで資金を費消し、パイを取り合い、収益を悪化させていく、という現象に対しては、世の中の資金を最適配分するという観点から、変えていく必要性を感じます。
スタートアップ・エコシステムが拡大するに従って、株主・投資家側から、競合プレイヤーとの発展的統合をイグジットの選択肢として要求するようなケースも出てくると思いますし、起業家としてもそのような選択肢を検討する重要性が増していくんじゃないでしょうか。そのような意味合いから、個人的には、一連の統合案件はポジティブに捉えています。