今春、エレキ事業を束ねる中間持ち株会社「ソニーエレクトロニクス」を設立。表向きの理由は「事業間の一体運営をさらに推進する」などと発表されたが、これまでも事業内連携は強めており、敢えて新組織を作ることに説得力がなかった。だが、今回ソニーを継承する受け皿としての位置付けが示され、外部から見ればようやく合点がいった。

 他にも、ソニー関係者によると、ゲーム子会社の「ソニー・インタラクティブエンタテインメント(SIE)」に出向中だったソニー社員たちが今春、SIEへ転籍したという。この関係者は意図を測りかねていたが、「ソニー本体の先行整理」という意味合いがあったとすれば納得がいく。

 ソニーの歴史と照らし合わせると、おもしろいのはやはり、エレキ事業がソニーの商号を継承することだ。

 これまでの流れはむしろ逆で、ソニーからエレキ事業を外出ししていた。テレビ部門など次々と分社化を進め、各部門の経営責任を明確にした。パソコン(バイオ)、バッテリーなどは部門ごと売却した。

 そんな厳しさはあっても、前社長兼CEOの平井一夫時代は、「エレキ復活」を掲げていた。ウォークマンなど輝かしいエレキ全盛時代の復興を望む、ソニーOBやソニーファンからの根強い声もあったからだろう。

 吉田社長に代わってからは、たとえ看板倒れであったとしてもエレキ偏重の発言は少なく、今回の組織改編に当たっても、「多様性は経営の安定性」などと、グループ経営の重要性が強調された。

 エレキ事業にソニーの“のれん”は譲って、祖業のプライドは傷つけない。されど本社からは切り分けて、グループの一事業としてこれまで以上に冷徹にコントロールする。今回の組織改編からはそんなソニーの意思が垣間見える。

 奇しくもコロナショックにより事業別で最大のダメージを受けそうなのはエレキ事業だ。ソニーは21年3月期の営業利益で、20年3月期比50%以上減という悲惨な予想を立てている。吉田社長は経営方針説明会で「環境変化に応じた体質の強化にも取り組んで参ります」と意味深な説明をしており、リストラの四文字がちらつく。