まず挙げられるのが、携帯電話のカメラへのQRコード読取機能搭載である。先鞭をつけた日本テレコムは、URLへの接続を早くする用途を追求した。雑誌や広告媒体にQRコードを印刷してもらい、それを携帯電話のカメラで撮影する。いまとなってはよく見る光景だ。まもなく他のキャリアや携帯電話端末にもこの機能が導入され、QRコードは生活者に近いところに居場所を得た。

 交通機関での導入もめざましい。ANAは、SKiPサービスを2005年に開始した。空港のカウンターや自動チェックイン機でのチェックインを不要とする、QRコードまたはICチップを使ったチケットレス搭乗サービスだ。同様のサービスはJALなどにも広がった。

 このように、QRコードは一般生活で利用されるようになっていった。

◇小さく、安全に、スタイリッシュに

 他業種で利用されることによって、QRコードはどんどん進化していっている。いま進んでいるのは小型化、セキュリティの強化、デザイン性の加味の3点だ。

 小型化という観点では、ファインダパターンを3つから1つにして、1ミリ角という小スペースに英数字20文字程度を格納できるマイクロQRが開発された。これにより、いままでバーコードをつけることもできなかった医薬品などにも導入されるようになった。

 またQRコードは多くの情報を格納できる一方で、セキュリティ面に不安があった。そこで情報の漏洩、改ざんなどを防ぐため、非公開のデータ領域をもつSQRCコードが発明された。

 デザイン性という意味では、デザインQRの登場にも言及したい。これはQRコードが30%までの汚れや破損なら、格納されている情報を読み取れること(誤り訂正機能)を利用したもので、汚れや破損を許容しない代わりに、ロゴやイラストをQRコード上に配置したものである。また最近ではフレームQRという、従来のQRコードよりもセキュリティが高いだけでなく、よりデザインができる割合が増えたものもある。

 こうして進化し続けるQRコードは、多様な構造の電車が行き来する日本の駅のホームドアを自動制御するのに使われたり、中国の決済方法として広く浸透したりと、さまざまなところで大きな変化を生み出し続けている。

◇イノベーションのヒント

 QRコードは、一人の天才的な技術者や経営者の力によってできたのではない。誕生、標準化、普及の各段階で、さまざまな業界の人たちがその都度中心となり、プロジェクトを引っ張っていった。そしてそうしたプレイヤーたちが、ラグビーのように次へ次へとボールをつないでいったのだ。