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シリコンバレーやエストニアなど、注目の集まる海外地域で働く日本人に共通する悩みは、日本の本社や取引先のお偉いさんから、現地企業との顔つなぎを頼まれることだ。生き馬の目を抜く世界では、単なる「情報交換」のようなふわっとした目的の訪問など、無視されて当たり前。いくら社長や役員が表敬訪問したいといっても、そう簡単にアポは取れないからだ。
米国の大学やハーバード・ビジネス・スクールで学び、総合商社で丁々発止のビジネスを行ってきた経験を踏まえて、現在、日本人の英語力向上とグローバル・リーダーの育成に携わる著者が、最新作『グローバル・モード』から抜粋してそのコツを紹介する。

海外の表敬訪問は嫌がられる

 日本の企業の海外オフィスからよく上がる悲鳴1つが、「簡単にアポを取れと言わないでくれ」というものです。いくら役員や本部長などの偉い人が表敬訪問したいといっても、なかなかアポは取れないからです。

 相手にまず聞かれるのがアジェンダ(=議題)、つまり「何を話しに来るのか」ということです。「勉強させてもらおう」「向こうの空気を吸ってこよう」といった程度の動機では、生き馬の目を抜く勝負をしている相手にとって貴重な時間を費やすメリットはありません。「情報交換」といっても、出す価値のある情報はあるのでしょうか。

 高文脈の世界では、「権威者の意向」が決断に反映されるので、偉い人をもてなす意義はそれなりにあるのですが、会議や面談を「タスクを洗い出すためのもの」と考える低文脈の世界では、表敬訪問のメリットは薄いのです。

 ですので、会議や面談に参加するのは、「権限」と「知識」を兼ね備えている人にすべきです。海外の組織は日本ほど階層化されておらず、担当者の権限がより広く、その場でおおむね決断が可能です。そこに日本から、現場に詳しいが権限がない担当者が行くと、「持ち帰って検討します」と何も決められず、逆に偉すぎる人が行くと、「詳しいことは現場に聞いてから」となってしまい、会う意味がないと思われてしまうのです。

 どうしても偉い人が表敬訪問をしたいというときは、相手の偉い人と引き合わせて大きな夢を語ってもらうか、交渉事の最後のお願いなど“押し込み”として活躍してもらいましょう。権限のない担当者が行くときは、事前に広めの社内承認を取りましょう。アジェンダを明確にしておくことは、事前の社内根回しにも役に立ちます。