プレゼン資料では、目線誘導に「↓」ではなく「▽」を使うべき理由Photo: Adobe Stock

 パワーポイントでプレゼン資料をつくるのに時間がとられる……。
 そんな悩みを抱えているビジネスパーソンが増えています。そこで、ソフトバンク在籍時に、最速で「一発OK」を勝ち取るプレゼン資料をつくるノウハウを磨き上げた前田鎌利さんにまとめていただいたのが、『パワーポイント最速仕事術』(ダイヤモンド社)です。

「パワーポイント最速仕事術」のポイントは2つ。
 まず、「優れたスライドの型」を把握することです。見た瞬間に内容が理解できるスライドには、「テキスト」「図形」「グラフ」「画像」「アニメーション」などの「型」があります。その「スライドの型」をゴールにすれば、いちいち「どのようなスライドにしようか?」と悩む必要がありません。

 次に、その「スライドの型」を最速でつくるパワーポイントの操作法をマスターすることです。パワポには多くの機能がありますが、「スライドの型」をつくるために必要な機能はごくごく限られています。その限られた機能をマスターするだけで、「一発OK」がとれる優れたプレゼン資料があっという間に出来上がるのです。

 そして、『パワーポイント最速仕事術』では、「スライドの型」と「その型をつくるためのパワーポイントの操作法」を、ビジュアル満載で紹介しています。本連載では、その一部を抜粋しながら、優れたプレゼン資料を「最速」でつくるノウハウを解説してまいります。

 早速ですが、下図をご覧ください。

プレゼン資料では、目線誘導に「↓」ではなく「▽」を使うべき理由

 これは、「読書のよいところは?」というアンケート調査の結果、「新しい知識や情報を得られること」というメリットを挙げた人が61.6%いたことを示すスライドです。

 1と2の違いは一ヵ所。「読書のよいところは?」というテキストと、「『新しい知識や情報を得られること』61.6%」というテキストの間に、「▽」があるかないか、その一点だけです。しかし、スライドの理解が早いのは、明らかに(2)のほうです。「▽」の存在によって、二つのテキストの間の「関係」が明確になっているためです。

 ただし、3のように、二つのテキストの関係を示すために「↓」(矢印)を使うのはNGです。というのは、「↓」を使うと、なんとなく「増減」を示しているように見えるなど、何らかの意味を無意識に与えてしまうおそれがあるからです。

 ですから、こういうときには必ず「▽」を使用するようにしてください。このマークを使えば、「増減」を示しているなどといった誤解を招くおそれがないばかりか、「つまり」「なぜなら」「だから」など論理的な関係を示していることが明確になります。

 ただし、パワーポイントには「▽」(下向きの三角)がデフォルトで設定されていませんので、オリジナルで作成する必要があります。その手順は以下のとおりです。

【手順1】[ホーム>図形]で「二等辺三角形」を選択して“ほどよい形”に描画する。

プレゼン資料では、目線誘導に「↓」ではなく「▽」を使うべき理由[1 ホーム>2 図形]で「二等辺三角形」を選択。3のように“ほどよい形”に描画する。
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【手順2】図形を右クリックして「図形の書式設定」を選択。[図形の書式設定>図形のオプション>サイズとプロパティ>サイズ>回転]に「180°」と入力して[Enter]キーを押す(あるいは、回転ハンドルで「180°」に合わせる)。図形をグレーで塗り、枠線を消したら完成。

プレゼン資料では、目線誘導に「↓」ではなく「▽」を使うべき理由[図形の書式設定>図形のオプション>サイズとプロパティ>サイズ>1 回転]に「180°」と入力。2の回転ハンドルでも可。
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なお、このマークはグレーなどを使用し、「青」や「赤」などのカラーは使用しないようにしてください。「青」や「赤」のカラーを使えば、ポジティブな印象やネガティブな印象を与えて、ミスリードしてしまうおそれがあるからです。グレーで目立たないようにするのが得策です。

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プレゼン資料では、目線誘導に「↓」ではなく「▽」を使うべき理由
前田鎌利(まえだ・かまり)
1973年福井県生まれ。東京学芸大学卒業後、光通信に就職。「飛び込み営業」の経験を積む。2000年にジェイフォンに転職して以降、ボーダフォン、ソフトバンクモバイル株式会社(現ソフトバンク株式会社)と17年にわたり移動体通信事業に従事。営業プレゼンはもちろん、代理店向け営業方針説明会、経営戦略部門において中長期計画の策定、渉外部門にて意見書の作成など幅広く担当する。
2010年にソフトバンクグループの後継者育成機関であるソフトバンクアカデミア第1期生に選考され、事業プレゼンで第1位を獲得。孫正義社長に直接プレゼンして数多くの事業提案を承認されたほか、孫社長が行うプレゼン資料の作成も多数担当した。ソフトバンク子会社の社外取締役や、ソフトバンク社内認定講師(プレゼンテーション)として活躍したのち、2013年12月にソフトバンクを退社。独立後、『社内プレゼンの資料作成術』『社外プレゼンの資料作成術』『プレゼン資料のデザイン図鑑』(ダイヤモンド社)を刊行して、ビジネス・プレゼンの定番書としてベストセラーとなる。
2016年株式会社固を設立。ソフトバンク、ヤフーをはじめとする通信各社、株式会社ベネッセコーポレーションなどの教育関係企業・団体のほか、鉄道事業者、総合商社、自動車メーカー、飲料メーカー、医療研究・開発・製造会社など、多方面にわたり年間200社を超える企業においてプレゼン研修・講演、資料作成、コンサルティングなどを行う。プレゼンテーション協会代表理事、サイバー大学客員講師、情報経営イノベーション専門職大学 客員教授なども務める。