野望は、公務員を覚醒させること

河原:場をつくり、文化をつくれば自然と人はつながっていくんですね。

脇:最近、特に人のつながりに肩書きは関係ないと強く感じます。例えば多くの人は、公務員に対して、「安定を求めて公務員になったんでしょ」「仕事に対する思いはないんだろう」という印象を抱いていると言われます。もしかしたら、そういう考えの公務員もいるかもしれません。ただ、そうではない公務員もたくさんいることを、僕は知っています。

 「公務員」とひと括りにするのではなく、一人ひとりの個性が見えるようになっているのが今の時代です。それは公務員に限らず、民間企業の人も同じでしょう。

 であれば組織ではなく、人とつながっていけばいい。組織の壁を超えて、個人同士が信頼関係を築いていく。そして、その個人が組織に戻ったとき、組織同士で物事を動かすようになる。これが、現代の世の中の動かし方だと思います。

 もちろん、全く知らない人に対しては警戒心を抱くのが人間というものです。ただ一方で、心の鎧が脱ぎやすくなる環境を、どうつくればいいのか、ずっと考えています。それは例えば、間に誰かが入ってつなぐことかもしれないし、参加者を「公務員」「学生」などと同じ属性の人に限定することなのかもしれません。ただ、これまでの組織における上意下達の意思決定からではなく、もっとゆるい横のつながりで新しいことをやるといいと思っています。

河原: 脇さん自身、人とのつながりが増えた中で、公務員をやめようと思ったことはないんですか。

脇:かつてはありました。でも今は全くやめたいとは思っていません。むしろ、どんな形でもいいから公務員でいようと思っています。それは、「内側にいることの価値」を感じるからです。例えば、「よんなな会」を通して民間企業の人たちと出会う中で、「行政の中に、僕のような人間が必要だ」と言ってもらえることがたくさんあります。特に社会起業家は行政と連携することも多いから、僕には公務員の立場で頑張ってほしいと応援してくれることがあるんです。

 民間企業ではできないけど、行政にいるからできることもある。だとしたら、僕は公務員でいる価値を最大限生かしているだろうか。やりきれるところまでやって、これ以上できることはないと感じるまで、公務員をやめるつもりはありません。もしそうなったら、次を考えようと思っています。

 ただ、今だって総務省や神奈川県という肩書きがあるから会える人も多い。それでできる仕事にやりがいも感じています。公務員がコミュニティ運営者のスキルや意識を持ったら、もっと世の中が良くなると思っています。

 僕は、全国の公務員の志を1%高めたいと思っていますが、それは既にモチベーションが99%の人を100%にしたいというわけではなく、本当は思いがあるのに仕事に忙殺されている人の士気を高めたいんです。士気が下がっている人の気持ちを上げた方が、はるかに価値がある。

 繰り返しますが、公務員は日本の人口の3%を占めています。それなのに残念ながら、公務員のイメージはあまり良くなくて、批判にさらされることも少なくはありません。確かに、「世の中を良くしよう」と考えて行動している人はまだ少ないかもしれません。けれど反対に「社会を悪くしよう」と思って働いている人もほぼいないはずです。

 多くが、何となく自分の今いる環境や雰囲気に流されて「これが当たり前だよね」と思っているわけです。そんな環境の中で、普段の当たり前とは違う当たり前もあるということを知ってもらうこと。今の常識を崩していくことが大事なんです。そして「よんなな会」はそれを体感できる場であってほしいし、公務員を覚醒する機会をつくるコミュニティでありたい。こんな思いを、全国の公務員338万人に届けるのが、僕の大いなる野望です。

公務員338万人を覚醒させる! 大規模コミュニティが抱く壮大な野望