発達障害のひとつであるADHD(注意欠陥・多動症)の当事者である借金玉さん。早稲田大学卒業後、大手金融機関に勤務するものの仕事がまったくできずに退職。その後、“一発逆転”を狙って起業するも失敗して多額の借金を抱え、1ヵ月家から出られない「うつの底」に沈んだ経験をもっています。
近著『発達障害サバイバルガイド──「あたりまえ」がやれない僕らがどうにか生きていくコツ47』では、借金玉さんが幾多の失敗から手に入れた「食っていくための生活術」が紹介されています。
働かなくても生活することはできますが、生活せずに働くことはできません。仕事第一の人にとって見逃されがちですが、生活術は、仕事をするうえでのとても重要な「土台」なのです。
この連載では、本書から特別に抜粋し「在宅ワーク」「休息法」「お金の使い方」「食事」「うつとの向き合い方」まで「ラクになった!」「自分の悩みが解像度高く言語化された!」と話題のライフハックと、その背景にある思想に迫ります(イラスト:伊藤ハムスター)。
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やることは「箱をのぞき込むだけ」

 「毎日やりたいこと、続けたいこと」が、誰しもあると思います。たとえば、資格試験の勉強だったり、ちょっとしたストレッチだったり、サプリメントを飲むことだったり……そういった小さな習慣を固定していくのは案外簡単なことではありません。僕も気づいたらサプリメントを1週間飲み忘れていたり、もう20日もジムに通っていなかったりします。最後に参考書を開いたのはいつだったか思い出せないなんて、人生には本当によくあることですよね。ないに越したことはないのですが。

 そこで、僕がおすすめしたいライフハックが「エブリデイボックス」です。これは、毎日の習慣のために必要なアイテムを、ひとつの箱に入れておくというもの。この上なく単純な方法ですが、非常に高い効果があります。

 習慣が固定しない原因。それは、やるべきことが明確に1ヵ所にまとまっていない、分散してしまっていることにあるのです。反対にいえば「あなたの今日やるべきことはひとつの箱に全部収まっているし、その箱はあなたの部屋のいつでも見える場所にある。あなたがやるべきは、箱の中をのぞき込むことだけだ」という状況をつくれば、習慣の継続はとても容易になります。

請求書も仕事も薬も全部ぶっこむ

 エブリデイボックスはもともと、僕が毎日ちゃんと服薬するためのハックとして開発したものです。僕の家では、うつの薬は戸棚に、マルチビタミンは机の横に、喘息の薬はかばんの中に……と、飲むべき薬が方々に点在していました。結果、習慣が固定化せず、「毎日ひとつか2つの思い出した薬だけは飲んで、それ以外は忘却」の状態が続いていたのです。

 持病が悪化して困った僕は、ひとつの大きな箱に薬やサプリメントをまとめてぶっこんでみました。こうしておけば複数のタスクを「毎日一度エブリデイボックスを見る」の一手に減らすことが可能です。

 こうして毎日すべての薬を服薬する習慣を手に入れた僕は、ある日思い立ってそこに読みかけの本を放り込むようにしました。その結果、僕は毎日薬を飲むついでに本を箱から引っ張り出して読むようになりました。さらに調子に乗った僕は、フィットネスジムの会員証や勉強中の参考書、払うべき公共料金の請求書、返送するべき書類などもその箱の中に放り込むようになりました。結果、支払い忘れややるべき事務仕事の漏れが劇的に減りました。

「後回しになりがちだけど重要なこと」こそ入れておく

 このハックで最も効果的だったのは、「ネタ帳」を毎日開くようになったことです。僕がやっている文章を書く仕事では「原稿を書く」工程よりも「ネタを考える」工程がとても重要です。でも、アイデアを出す作業は、日々に忙殺されてどうしても後回しになってしまいます。僕は毎度〆切前になってからワードに向き合って「何を書けばいいだろう……」と悩む日々を送っていました。

著者はTRUSCOの「スケルコン」(TSK-910TM)を愛用。
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 それが、箱にネタ帳を放りこんでからというもの、毎日服薬をするついでにネタ帳が目に入り「そうだ仕事のネタ出しをしなければ……」と意識できるようになったのです。

 こういう「ほんとはやりたいし重要なんだが、後回しになりがちなこと」を箱に入れておくと、知らず知らずのうちに習慣化できるようになります。

 あなたが1日にやれる習慣は箱ひとつです。しかし、そのたったひとつの箱はあなたの人生を確実に変えます。エブリデイボックス、ぜひ試してみてください。