会社が成長するにつれて、組織には様々な問題が発生する

 PMFを達成した後のゲームは、PMF達成前のゲームとは大きく異なる。PMFを達成するまでは、関わるステークホルダーは、顧客、経営メンバー、投資家と範囲が限定されている。したがって、業務請負に関して明文化したり、方針を明確にしなくても、少数の経営陣とメンバーだけでどうにか仕事は回っていく。

 PMF達成前のステージにおいては、そもそもリソース(ヒト・モノ・カネ)は限られているので、それをどのように配分して活用するのかという観点はあまり必要ない。なぜなら、経営チームの時間やスキルこそが最大のリソースなので、寝る間も惜しんで働き自己研鑽して、ひたすらPMFを目指すという方針が支配的になるからだ。

 しかし、PMFを達成し、会社が成長して大きくなるにつれ、組織のメンバーも増えてくる。そうすると、組織のルール不足やマネジメント不足など、様々な問題(リスク)が発生してくる。会社に勢いがついて成長期に入ると、息つく間もなく、やるべきことが次から次へと出てくるのだ。

 したがってPMF達成のタイミングで、起業家は自らを自己分析して事業家(CXO)に変身・進化するよう努力する必要がある。なぜなら、起業家から事業家(CXO)に変身できないことによって、起業家自身が事業にとって最大のボトルネックになってしまうからだ。

 あなたは、下記の問いに答えることができるだろうか?

 ●PMF後にミッション・ビジョン・バリューをどう磨いていくのか?
 ●PMF後の事業をスケールさせる戦略やロードマップは、どのように立てるのか?
 ●成長に寄与する人材を、どう採用し、定着させるか?
 ●全体の戦略から、各個別の戦術に落とし込み、戦術を実行するための行動マネジメントをどうするか?
 ●顧客獲得のプロセスをどう最適化するのか?
 ●顧客獲得後、継続させるためのカスタマーサクセスの考え方は?
 ●ユーザー・エクスペリエンス(UX=ユーザー体験)ベースの製品開発をどう実装するのか?
 ●ディフェンシビリティ・アセット(Defensibility Asset=持続的競合優位性資産)の蓄積をいかに考えるか?
 ●上場するまでのファイナンスについて、そのエクイティストーリーをどう作るのか?
 ●それぞれの資金調達のフェーズで、どうやって有利に投資家と交渉を進めていくのか?
 ●人員増加に伴う、オペレーションの属人化/陳腐化、見えないところのボトルネック発生解消にどう対応するか?
 ●どのような事業ポートフォリオを組めば、全体最適が図れるか?
 ●バリューチェーンの上流/下流もしくは横にいて、市場シェアを取っている競合企業を買収/出資/業務提携して、さらなる成長軌道を描けないか?

 PMFするまでは、顧客と対話をして、良いプロダクトを作ることだけに没頭すればよかった。

 しかし、PMF後は、ステークホルダーが一気に増えて、カバーすることや意思決定することがとても多くなる。

 また、様々な意思決定をするだけではなく、「なぜ、その意思決定をしたのか?」と、意思決定に対する説明責任も果たす必要が出てくるのだ。

 当然、CXOとて、一人の人間なので、経営に関するあらゆる領域の専門家になるのは不可能に近い。しかし、ユニコーンを目指すスタートアップCXOならば、最低限、専門家と対話/対峙ができるまでレベルアップする必要がある。

 さらに欲を言えば、そうした専門家にディレクションできるまでに自分のレベルを上げてほしい。