何でもオープンに質問し合うのがグローバル・モードといえど、話したくないこと、話すべきでないことは当然ある。人のよい日本人はなかなか断るのが苦手かもしれないが、いくつか表現を覚えておけば心強い。
米国の大学やハーバード・ビジネス・スクールで学び、総合商社で丁々発止のビジネスを行ってきた経験を踏まえて、現在、日本人の英語力向上とグローバル・リーダーの育成に携わる著者が、最新作『グローバル・モード』から抜粋してそのコツを紹介する。
情報開示は必要だが、うまく断るのも大事
積極的に質問に答えていくのがグローバルの流儀とはいえ、企業上の機密や交渉上言えないことはもちろんあります。「情報開示が大切」ということと、「何でも開示する」とは違います。多様性を重んじる環境では、「言わない権利」もまた、尊重されるべきものなのです。
ですから、答えられないことに対して罪悪感を持つ必要はありません。聞かれたら答えなければ失礼だろうと、たとえ機密情報でも頑張って開示しようとする方もいますが、お互い話せないことがあるのは当然で、そこはきちんと断ってよいのです。
また、製造方法や納期など難しい注文に、その場で即答する必要もありません。難易度が高いこと、現時点で不確定なことまで、無理にコミットする必要はないのです。その場で回答するか持ち帰るか、どこまで情報開示するのかは、もう少し慎重に考えた方がよいでしょう。
ただし、答えられないこと、答えたくないことについて、お茶を濁すのはNG。笑顔で「Thank you」を添え、開示できない理由をさらっと告げましょう。明るく軽やかに断ればよいのです。
I’m sorry, but I’m not authorized to disclose that information.
→申し訳ありません。私は、その情報を開示する権限を持っておりません
I’m sorry, but I’m not allowed to discuss that.
→あいにく、それについて話す権限を持っておりません
I’m sorry, but I’m under an NDA (Non-Disclosure Agreement), so I can’t share that information.
→残念ながら秘密保持契約があり、その情報は共有できません(NDAを守ることは、自分自身の信頼性にも関わる)
答えを知らないことは、恥ずかしいことではありません。グローバルな環境では、知らないことを率直に認めて調べます、という姿勢が評価されます。無茶振りであれば、誰も答えられないよ、と言ってしまうのもありです。
That’s a very good question. However, I don’t know the answer to that. I’ll look into it.
→よい質問ですね。ただ、私は答えを知りません。調べておきますね
Let me get back to you on that.
→持ち帰って、後でご連絡します
失礼な質問やプライベートすぎる質問は、もちろん断ってかまいません。ただし、ムスっとしないように。笑顔で言えば、角も立ちません。
I’d rather not answer that question. Sorry about that.
→その質問には答えないことにします。申し訳ありません
That’s a little personal for me. I’d rather not answer that question.
→少しパーソナルになりすぎていますね。その質問には答えられません
Sorry. That’s a bit private for me.
→申し訳ないですが、それはプライベートな質問ですね
以上、35回にわたって『グローバル・モード』の内容をご紹介してきました。ほかにも、カギとなる場面で役に立つ表現がたくさんあります。ぜひご覧ください。