開発から半年足らずで予約開始。
異例のスピードを可能にしたプラットフォーム思考
――WOSHは開発スピードも早く、予約受付まで半年もかかっていないようですね。
徳島県出身。東大・東大院で建築学を専攻。在学中より、大手住設メーカーのIoT型水回りシステムユニットの開発プロジェクトに参加。teamLab等でPM・Engineerとして勤務し、センシングや物理シミュレーションを用いた作品・プロダクトの企画・開発に従事。建築物の電力需要予測アルゴリズムを開発・売却後、WOTAに参画。特技は阿波踊り・競技ダンス。東京大学総長賞受賞。修士(工学)。photo by TAKESHI KOJIMA
2020年3月からWOSHの開発を本格的に始め、7月から予約受付を始め、開始2週間で年内出荷分の300台の注文が入りました。
20世紀型のハードウェア開発プロセスでは、数年かかったと思いますが、我々は同時並行に行う設計プロセスを考案して、半年以内に製品化にこぎつけるようにしました。これは、米国の産業用ロボット開発企業を参考にしました。
また、もともとが一つの製品をつくるためだけに開発を進めてきたのではなく、汎用的になるように、プラットフォーマーとしての発想を持って進めてきました。
たとえば、製品ロードマップを描く際も、共通部品を増やして投資対効果を高められるように考えています。シャワーの技術をすぐに手洗い機に転用できたのも、そのためです。
――要素技術の横展開を最初からイメージしてマーケットに製品を投入したのですね。なぜシャワーから始めたのですか。
水は大きく3種類にわけられます。まず、飲むための水、つまり飲料です。次に、身体に触れる水で、浴槽やシャワーの水がそれにあたります。そして、最後に産業用などで用いる身体に触れない水です。
この中で、最も安全管理が難しく、人々の水質要求が高いのが何かといえば、実は飲料ではありません。身体に触れる水なのです。
身体に触れる水は、当然口に入っても安全でなければなりません。一方で、洗浄などに使われるため汚れやすい。さらに、家庭で使用される量は、地域やライフスタイルによって違うものの、平均で1日におよそ200リットルに及ぶともいわれます。これは、飲む水の量の約100倍になります。
逆にいえば、それだけ多くの水を使う、身体に触れる水を再利用できれば、より多くの課題解決につながると考えて、あえて難しい分野から研究を進めてきました。
――水処理技術といっても、ろ過や廃水処理など様々なものがあります。WOTAの技術の強みはどこにあるとお考えですか。
抽象的にいえば、水処理のプロセスを情報化する技術といえます。具体的にいえば、センシング技術と機械学習(AI)によるモデリングにより、水処理を最適に制御できることが強みです。
水処理には古くから用いられている技術が多く、「枯れた技術」と呼ばれているものの一つです。それらを我々の先端的な制御技術と組み合わせることで、ほとんど水を使わずに再利用できる水循環技術を開発しました。
これまで水処理は経験即で行われてきました。それを膨大なデータを基に、動的に制御するモデルを開発しました。どの膜にどのような圧力をかけるべきなのか。どのような不純物がどの程度入っているのか。膜の状態をリアルタイムで測定し、刻々と変わる状況にあわせて、最適な制御を行っているのです。