生物学的な視点から浮気を肯定するのは…

──「科学で見つかった事実に抵抗して生きていく」「進化の奴隷にならない」というのはとても胸に刺さる話ですね。

更科 話はちょっと横に逸れるかもしれませんが、そもそも生物の「オス・メス」というのは受精するときに生殖細胞が小さいのがオス、大きいのがメスと決めているわけです。構造上、オスはメスに比べてたくさんの子どもを作ることができることがふつうです。

 でも「だから、男性が浮気をするのはしょうがない」とか「生物学的に見て、一夫多妻制が自然の姿だ」と言ってしまうのはナンセンスです。

ビジネスにも使える、科学者の「仮説」を立てる方法

 生物のなかにも一夫一妻制はいくらでもあって、テナガザルもそうです。また、ヤドクガエルの中には、オスがオタマジャクシを背中に乗せて運ぶものがおり、ほぼ一夫一妻制に相当する生活形態をとるものもいます。

 こうした事実と「私たちは、こうやって生きていかなければいけない」というのはまったくの別ものです。でも、そういうことを考えるきっかけになるという意味でも、自分の専門外の知識ーーーーたとえば生物学について学ぶことには、とても大きな価値があると思っています。

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第2回 学びの意味、教養の価値はどこにあるのか?
第3回 ビジネスにも使える、科学者の「仮説」を立てる方法
第4回 生物の世界において「進化」は「変化」である

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