生物とは何か、生物のシンギュラリティ、動く植物、大きな欠点のある人類の歩き方、遺伝のしくみ、がんは進化する、一気飲みしてはいけない、花粉症はなぜ起きる、iPS細胞とは何か…。分子古生物学者である著者が、身近な話題も盛り込んだ講義スタイルで、生物学の最新の知見を親切に、ユーモアたっぷりに、ロマンティックに語る『若い読者に贈る美しい生物学講義』が11月28日に発刊されて、発売4日で1万部の大増刷となっている。

養老孟司氏「面白くてためになる。生物学に興味がある人はまず本書を読んだほうがいいと思います。」、竹内薫氏「めっちゃ面白い! こんな本を高校生の頃に読みたかった!!」、山口周氏「変化の時代、“生き残りの秘訣”は生物から学びましょう。」、佐藤優氏「人間について深く知るための必読書。」と各氏から絶賛されたその内容の一部を紹介します。

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私たちと自動車が似ているところ

 私たちは、運動すれば、おなかが空く。運動で消費したエネルギーを、食べ物で補充しなければいけないからだ。自動車だって同じである。自動車を走らせればエネルギーを消費するので、エネルギー源であるガソリンを入れなければいけない。

 でも、私たちは、何もしなくても、おなかが空く。勉強なんかしなくても、仕事なんかしなくても、家でゴロゴロしているだけで、おなかが空く。自動車でも似たようなことはある。たとえ自動車が止まっていても、エンジンが回っていれば、ガソリンは減っていく。

 しかし、自動車は、エンジンを止めればガソリンは減らない。いつまでも、ガソリンは減らない。これは私たちには、ちょっと真似ができない。でも、真似ができる生物もいる。

 分子生物学の研究室では、しばしば大腸菌を冷凍保存する。大腸菌を培養している液に10パーセントほどグリセロールを混ぜる。そうすると、冷凍しても、大腸菌の細胞の中に、氷の結晶ができない。

 冷凍してから10年以上経っていても、解凍すれば、再び大腸菌はよみがえる。大腸菌は死んでいなかったのだ。まるで、エンジンを止めた自動車みたいだ。

 とはいえ、冷凍保存されている状態を、生きているといえるかどうかは微妙である。そこで、ここでは、冷凍保存されていない状態の生物について、つまり、いわゆる生きている状態の生物について、考えていくことにしよう。