外部コンサルタントには、
避け難く「功罪」がつきまとう

 ただし、コンサルタントの限界もしっかり認識しておく必要があります。

 まず、彼らの戦略提案は“大きな画”としては有益でありつつ、それを“丸飲み”したら失敗が決まったも同然だということがあります。

 なぜなら、彼らは外部の人間であるがゆえに、会社の現場の“どうしようもない現実”や、組織に自然に生ずるセクショナリズムや派閥などの“社内政治の現実”を深く認識することができないからです。

 それゆえに、彼らが提案した戦略を、そのまま「実行」しようとすると、社内に大きな軋轢を生み出し、改革が頓挫してしまう結果を招くことが多いのです。場合によっては、そこで生じた軋轢によって組織がガタガタになり、レームダック(死に体)になる会社もあります。

 これは、“コインの裏表”のようなもので、彼らが社外のプロフェッショナルだからこそ、より客観的かつ本質的な戦略提案が可能になる一方で、それがゆえに「実行性」に乏しいものになってしまうということです。そして、“コインの裏表”である以上、この二つの要素を同時に満たすことはあり得ないと考えたほうがいい。

 にもかかわらず、コンサルタント会社のなかには、コンサルタント契約のなかに、その会社が提案した内容を一切修正してはならないという趣旨の条項を入れるところがあります。これには、私は非常に批判的で、外部のコンサルタントの提案は、必然的に「実行性」に乏しいものになるのだから、適切に修正することこそが、経営改革を成功させる必須の条件だと考えています。

 そして、ここで重要になるのが社内参謀の存在です。

 なぜなら、意思決定者よりも現場に深く通じている参謀こそが、外部のコンサルタントの戦略提案の「実行性」を最も正しく検証し、意思決定者に進言しうるポジションだからです。

 実行できない戦略は「戦略」と呼ぶに値しませんから、実行プロセスを生々しくイメージしつつ、そこから逆算しながら、戦略に実行性を備えさせる参謀の存在は、経営改革の成否を左右すると言っても過言ではありません。

経営者を”転がすプロ”である
コンサルタントに注意する

 ところが、ここに“落とし穴”があります。

 現場から離れている、または、現場・現実感覚がない経営層の目には、ときに、理路整然としたコンサルタントの戦略提案が非常に魅力的に映るからです。根拠となるデータも完璧に揃っている。論理的にも完璧に整合性が取れている。そして、明快な「未来展望」が描かれている。そんな提案書に、すっかり魅入られてしまうわけです。

 意地悪な見方をすれば、コンサルタントのなかには、そのように経営層を“転がす”という意味でのプロフェッショナルと言い得る人物もいます。見栄えのいいプレゼンテーション資料を作り上げ、自らの提案を説得力をもって説明するのが、彼らの仕事とも言いうるのです。基本的に、コンサルタントの「商品」は提案書であり、それを納品すれば業務は完了。結果責任を負わないのだから、そういうコンサルタントがいるのも当然のことでしょう。

 さらに問題なのは、コンサルタントが戦略提案をするのみならず、実行まで請け負うケースです。こちらは、より大きな問題を生み出す可能性があると認識しておく必要があります。

 注意点は二つ。一つ目は、コンサルタントが実行まで請け負う場合には、契約を短期限定とし、結果は厳しく問うべきです。二つ目は、実行段階では、彼ら自身での関与を最低限にさせて、出来る限り自社の人間で実行すべきだということです。

 最悪なのは、長期契約にしたうえに、時間の経過とともに、コンサルタントに「丸投げ」「お任せ」にしてしまうことです。契約時は、トップや経営層も、強い関心をもっていますが、時間の経過とともに関心が薄れていってしまうのです。

 その結果、コンサルタントがかなりの人間を社内に送り込み、現場がコンサルタントの指揮下に入ってしまうことがあります。そして、コンサルタントが、力づくで「短期の結果」を“絞り出して”しまうのです。