解析の結果、音楽教育は、年齢やトレーニング期間に関係なく、子どもの認知能力(言語的/非言語的能力や処理能力など速度に関連した能力など)には何の影響も及ぼさない可能性が示唆された。
音楽ではなく、ダンスやスポーツなど別のスキルを習っている子どもを対照群に設定するなどした、研究デザインの質がより高い論文を対象に解析しても、音楽教育が認知能力や学業成績に及ぼすポジティブな影響は認められなかった。ただし、対照群を設定していない研究や、参加者の対照群と介入群へのランダム化を行っていない研究では、わずかな効果が確認されたという。
こうした結果を受けてSala氏は、「この研究により、“音楽は子どもたちを賢くする”という通説は正しくないことが明らかになった。つまり、子どもの認知能力や学力の向上のみを目的として音楽を学ばせても、無意味な可能性があるということだ。楽器の演奏を学ぶ中で、演奏が上達するように脳を鍛えることはできる。しかし、この効果は音楽だけに限定されるのであって、楽器の演奏が上達したからといって、数学が得意になるわけではない」と話している。
一方、Gobet氏は、「それでも、音楽教育により、社会的スキルや自尊心の向上などが見込めることを考えると、音楽教育は子どもにとってメリットがあると言える。また、計算を伴う記譜法といった音楽の特定の要素が、他の分野での学習に役立つ可能性がある」と述べている。(HealthDay News 2020年7月29日)
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