◆「すべて同意! ビジネス価値創出への『5つの心構え』をまとめた決定版だ」(入山章栄・早稲田大学ビジネススクール教授)
◆「これは仕事術ではない。ゲームのルールは変えられることを証明した珠玉の実践知だ」(鈴木健・スマートニュース創業者・CEO)
コロナ禍で社会構造やビジネスモデルが変化する今、「生産性」「効率」「成果」が見直されている。そんな中、各氏がこぞって大絶賛するのが『その仕事、全部やめてみよう』という書籍だ。
著者は、ITベンチャーの代表を10年以上務め、現在は老舗金融企業のCTOを務める小野和俊氏。2つのキャリアを通して、それぞれがどんな特徴を持ち、そこで働く人がどんなことに悩み、仕事をしているのかを見てきた。その中で、ベンチャーにも大企業にも共通する「仕事の無駄」を見出す。
本連載は、具体的なエピソードを交えながら、仕事の無駄を排除し、生産性を高めるための「仕事の進め方・考え方」を解説するものだ。

PDCAではなく、DCAPでやるべき「3つの仕事」Photo: Adobe Stock

 これまで日本では、PDCAが広くビジネスの世界で普及してきた。PDCAは、計画(Plan)→実行(Do)→チェック(Check)→改善(Action)のサイクルを回し、改善を進めていく手法だ。

 一方、さまざまな技術やトレンド、ベンチャー企業などが現れては消える現代においては、PDCAが不向きなプロジェクトも増えてきている。

 そこで日本人が慣れ親しんだPDCAをベースとした、いま求められる行動様式として、DCAPがある。

 DCAPは、それぞれの段階で用いられる言葉はPDCAと同じだが、その順序が異なる。実行(Do)→チェック(Check)→改善(Action)→計画(Plan)と、計画より実行が先にあるのが特徴だ。

 DCAPは、「未知の領域」と「変化していく領域」で強みを発揮する。まず実行することで、机上の知識ではなく経験として、未知のものや変わりゆくものの「手触り」がわかる。未経験のものに対しては、知識ではなく、経験を通して学ぶほうが圧倒的に多くの情報を得られる。

DCAPをサッカーで理解する

 子どもの頃、初めてサッカーに興味を持ったときのことを思い出してほしい。サッカーをいち早く知りたければ、最初にすべきことは何だろうか。それは、ルールを調べることではなく、蹴り方のコツを聞くことでもなく、まずサッカーをしてみることだ。

 ボールを蹴ったときに足がしびれる感覚、うまく蹴れずに変なところを蹴ってしまったときのつま先の痛み、足がきちんとボールをとらえたときにボールが勢いよく飛んでいく気持ちよさ、仲間のパスをうまく受けられたときの嬉しさなどが即座にわかる。

 体験によって、「サッカーってこんな感じなのか」という本質的な理解が得られる。未知のものについては知識で学ぶより経験したほうがいい。

「経験>知識」という原理がDCAPの根底にはある。「新しいものが生まれては消えていく」現代においては、しっかり計画を立てて改善していくPDCAよりも、未知のものにまず飛び込んでみるDCAPのほうが有益だ。DCAPの向き・不向きをまとめると、次のようになる。