投資家・経営者の視点の違いを経営に活かす
朝倉:ここまで両者の利害の違いが表面化しやすい場面を敢えて挙げましたが、逆に立場が違うからこそ補完的な関係になれる状況もありますよね。
村上:まずは、会社の成長、株主価値の向上に向けて、投資家・経営者は基本的に協力関係にあります。会社の成長という同じ方向を目指して議論ができるし、した方がいい。その時に、会社の中にいる経営者と外にいる株主で、違う視点から議論する事で、より大きな付加価値を出せる機会はあります。
小林:異なる立場から議論することで、マーケットや競争環境を複眼的に捉えることができますよね。
起業家は自社の視点に寄る傾向があるので、より広い視座で客観的に競争環境・事業環境を捉えられる投資家の視点を持ち込むことは、会社にとって非常にポジティブです。
朝倉:ベンチャーキャピタリストの方々と話をすると、「経営者と投資家は立場が違うし、投資家は経営者ほど会社のことはわからない」とおっしゃる方が多いですよね。
これはある種、経営者に対するリスペクトの表れであり、謙虚な態度なのだと思います。確かに、投資家がオペレーションレベルで経営者よりも事業に精通しているなどということは、普通はないでしょう。
一方で、投資家は、会社起点ではなく、マーケット全体から会社の立ち位置を俯瞰して見る視点を持つことを思うと、会社の成長に向けては、経営者と互いに補完しあえる関係なのだと思います。
この点は以前にご紹介した、「自社と資本市場のアングルの違い」とも共通する話です。
小林:そうですね。経営者が、自社の強みを起点に、競争優位性や成長可能性を見積もっていく一方で、投資家は、外部環境を起点に、この事業の勝ち筋は何か、勝てる要因は何か、という議論を持ち込むことができる。お互いに違う視点を戦わせて議論することによって、戦略筋・勝ち筋の検討がより深まり、成長・株主価値の向上を実現する確度の高い戦略を実行することができると思います。