◆「すべて同意! ビジネス価値創出への『5つの心構え』をまとめた決定版だ」(入山章栄・早稲田大学ビジネススクール教授)
◆「これは仕事術ではない。ゲームのルールは変えられることを証明した珠玉の実践知だ」(鈴木健・スマートニュース創業者・CEO)
コロナ禍で社会構造やビジネスモデルが変化する今、「生産性」「効率」「成果」が見直されている。そんな中、各氏がこぞって大絶賛するのが『その仕事、全部やめてみよう』という書籍だ。
著者は、ITベンチャーの代表を10年以上務め、現在は老舗金融企業のCTOを務める小野和俊氏。2つのキャリアを通して、それぞれがどんな特徴を持ち、そこで働く人がどんなことに悩み、仕事をしているのかを見てきた。その中で、ベンチャーにも大企業にも共通する「仕事の無駄」を見出す。
本連載は、具体的なエピソードを交えながら、仕事の無駄を排除し、生産性を高めるための「仕事の進め方・考え方」を解説するものだ。

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「会社は大きくすべきか?」と問われたとき、「大きくするほうがいい」と答える人は多いだろう。だが本当にそうだろうか?

 経営学用語に「スパン・オブ・コントロール」という言葉がある。

 これは、マネージャーの担当領域の限界や人員適正範囲を表す。スパン・オブ・コントロールが適正範囲内に収まっていないと、部下の業務把握や心身ケアが十分に行えず、重大事故の予兆も見逃してしまう。

 例えば、部下が3~4人のときはそれぞれの状況をよく把握していたマネージャーがいたとする。

 しかし部門の統廃合で、一気に部下が十数人に増えてしまい、部下への接し方が雑になり、上層部からの質問にもすぐ答えられなくなった。

 これはマネージャーのスパン・オブ・コントロールが適正値を超えてしまった例だ。会社の適正規模を考える際には、このスパン・オブ・コントロールを多義的に考えていく必要がある。

天ぷら屋の経営で考えてみる

 2つの天ぷら屋を例に、もう少し具体的に考えてみよう。1つは、職人かたぎの店主が味にこだわる店。もう1つはチェーン店だ。

 前者は、揚げ時間のほんの数秒で味に差が出るから、お弟子さんはなかなか揚げる仕事を任せてもらえない。何年も修業し、あるとき「そろそろお前も揚げてみろ」となる。

 だがおそらく、お弟子さんが何十人になってり、支店がどんどんできていくことはない。こだわり抜いた味を守ることがこの店の存在意義ならば、店主のスパン・オブ・コントロールは数人以内に留めておくのが適正値ということになる。

 一方、後者のチェーン店では入りたてのアルバイトも早々に天ぷらを揚げる。こだわりの天ぷら屋はクオリティの高い天ぷらをお客さまに提供することがお店の存在意義となっている。大事なのは規模ではない。

 チェーン店は、身近な場所に店を構え、安価で天ぷらを提供することに価値を置いている。そのため、さまざまな地区に店舗をかまえることが大切だし、アルバイトがマニュアル通りに天ぷらを揚げられるようにしないといけない。

 チェーン店ではクオリティをある程度に抑えて、スパン・オブ・コントロールの適正値を広めにとっていくための施策が大切だ。