「なぜ、日本ではユニコーン企業がなかなか出ないのか?」――。
この疑問への1つの回答となるのが田所雅之氏の最新刊『起業大全』(7/30発売、ダイヤモンド社)だ。ユニコーンとは、単に時価総額が高い未上場スタートアップではなく、「産業を生み出し、明日の世界を想像する担い手」となる企業のことだ。スタートアップが成功してユニコーンになるためには、経営陣が全ての鍵を握っている。事業をさらに大きくするためには、「起業家」から「事業家」へと、自らを進化させる必要がある、というのが田所氏が本の中に込めたメッセージだ。本連載では、「起業家」から「事業家」へとレベルアップするために必要な視座や能力、スキルなどについて解説していく。

会社がスケールするタイミングで、<br />ミッション、ビジョン、バリューに<br />整合性があるかをチェックするPhoto: Adobe Stock

バリューとは、メンバーの日々の行動規範

 繰り返しになるが、バリューとは、組織の取り組みにおいて優先すべき価値基準を指す。

 つまり、現在の状態(As-Is)からあるべき姿(To-Be)のギャップを埋めていくための戦略や戦術を実行するにあたっての、メンバー一人ひとりが日々の業務や顧客との向き合い方の行動規範を示したものといえる。

 フェイスブックのコアバリューは、以下の5つだ。

 1.影響を見据える/Focus on Impact
 2.素早く動く/Move Fast
 3.大胆になること/Be Bold
 4.オープンであること/Be Open
 5.ソーシャルバリューを確立する/Build Social Value

 フェイスブックは重要な意思決定をする際に、この5つに沿っているかどうかを確認するという。

 バリューも、実践に即して活用できないと形骸化してしまう。日々の実務の中で、使えるかどうかを確認しながらアップデートを継続していくのだ。

 スタートアップがPMF後に一気に拡大し、スケールして壊れることがある。スケールして組織が大きくなると、当初は浸透していたミッションやビジョン、それに伴うバリューが行き渡らなくなることがあるからだ。

 小さな綻びはどんどん大きくなり、気づいたときにはメンバー一人ひとりの想いはバラバラな方向を向いてしまい、会社は脆くも崩れてしまうということが起こる。

 ピーター・ティールも「文化が壊れるとプロダクトを作る原動力となる土台が壊れることになる」と述べている。

 だからこそ、会社がスケールするタイミングで、適宜、MVVに整合性があるかをチェックしなければならない(下図表)。

 

 そのためには、例えば、定期的なオフサイトミーティングなどを通じて、チームメンバーからフィードバックを得てMVVを随時、進化させていくことが重要だ。