コンビニの人手不足は解消するのか

 飲食店をめぐっては、閉店ラッシュが10月以降本格化するという見方がある。テナントに出店している場合、貸主への解約通告を半年前に設定しているケースが多いことがその理由だ。

 政府の緊急事態宣言発令を受けて、都心部を中心に飲食店の営業自粛が広がったのが、今年4月。もしその時期に閉店を決めていたとしても、半年前予告であれば10月までは家賃が発生するため、泣く泣く営業を続けているという飲食店は少なくない。

 今後、飲食店の閉店ラッシュが本格化することになれば、食いぶちを求めてコンビニに人が集まるという状況が、さらに強まりそうだ。

 コンビニ業界にとって、人手不足はまさに積年の課題だった。それがやや緩和される見通しになり、胸をなでおろす本部社員は少なくないだろう。

 一方で、そうした状況に懸念を強めているのが、公正取引委員会や一部の加盟店オーナーたちだ。

 特に公取委は、昨秋から大規模な実態調査に踏み切り、コンビニの24時間営業の強制にかかわる独占禁止法の問題点や、人手不足による人件費の上昇が加盟店を苦しめている実情などを指摘し、9月初旬に各社に改善要請をしたばかりだ。

 さらに言えば、昨年以降業界を所管する経済産業省と連携して、24時間営業の柔軟な見直しについて、本部側の動きににらみを利かせつつ、実態調査を通じて改善に向けた圧力をこれから強めようとしている矢先だった。

 それが、コロナ禍によって状況が一変してしまった。24時間営業の見直しの背景にある「慢性的な人手不足や、それに伴う人件費の上昇については、すでに改善している」という主張を、本部側が展開しやすくなり、公取委として改革を迫る圧力が一部削がれてしまう懸念があるわけだ。

 全く別の懸念もある。

「もっとひどい状況かと思っていましたが、たいしたことはなかったですね」。大手コンビニの幹部によると、公取委から改善要請を受けるまでのやり取りの中で、業界におもねるような声掛けをしてきた公取委の職員がいるという。

 実態調査の結果に対する受け止め方には、公取委の中でも温度差があるようだが、かつて「ほえない番犬」などとやゆされた及び腰の姿勢が、またぞろ公取委の一部で顔をのぞかせているのだとしたら、何とも心もとない。

「しょせんコロナ以前の実態調査ですから」。コンビニ本部から、そうした挑発的な声も漏れる中で、公取委は業界とどう対峙していくか。見せかけの攻防戦は誰も期待していない。