メンバー育成は「経験学習サイクルを回す成長支援」を
最後にメンバー育成について説明します。過去の踏襲が勝ちパターンのマーケットにおいては、「上司=正解」、上司と部下は「教える人と教えられる人」という関係でした。
しかし、VUCAの環境下では上司にも正解が分からない、課題やテーマに挑むことが必要になります。このような時代に求められる人材像は「経験学習サイクルを回して成長していける人材」であり、メンバー育成においては「経験学習サイクルを回す成長支援」が求められます。
経験学習サイクルは、自らの意思をもって「何かを企てる」ことから始まります。正解かどうかわからないなかで「それを実行に移す」「成功・失敗を学びに変え」「上手くいったことは横展開、上手くいかなかったことは改善を加えて再挑戦」というサイクルを回すことです。この経験学習サイクルを回して成長していけるメンバーをどれだけ育成できるかが今後のメンバー育成の大きな課題となるでしょう。
一方、上司に求められるのが「経験学習サイクルを回す成長支援」です。前述の通り、本人にやり方を任せられるような仕事の割り当てが重要になります。メンバーと目的やゴールを合意し、どういうやり方が良いかを一緒に相談して決めます。役割分担を明確にして任せつつ、数字によるモニタリングや定期面談を設定するなど、仕事の状況や育成課題を把握し、必要なサポートをします。
成長支援の具体的な場面としては、個別面談、営業同行などがあります。これらの場面を一方的にやってみせる場、教える場にしてしまうのではなく、メンバーの経験学習サイクルが回る場にできることが重要になります。そのためにはどうすればよいのでしょうか?
面談場面において大切なのは、「教える」ではなく、「一緒に考える」というスタンスです。もちろん上司が正解を知っており教えた方が早い場合もありますが、すぐに答えを出さずに本人に考えさせる、一緒に考えることが大切です。時には上司の想像を超えるアイデアがメンバーから出てくるかもしれません。そのような可能性を潰さず、育んでいくことがVUCA時代ではより求められています。
営業同行は、訪問前ミーティングと訪問後ミーティングの設定が特に重要になります。これまでは訪問の行き帰りに気軽にできた話も、オンラインでは事前にミーティングを設定しておかなければ話す機会を失います。訪問前に目的・ゴール・進め方・役割分担を決め、メンバーに任せたところを任せきれるか、訪問後に上手くいったこと、上手くいかなかったこと、次に向けてどうするか、今回の訪問で学んだことは何かを、明確化・言語化する習慣をつけることが大切です。
このように、「自分で企てる」→「実行する」→「振り返る」→「意味づける」という経験から学ぶ機会をどれだけ創出できるかが、これからのメンバー育成であり、成長支援の在り方でしょう。
そして、このような「自律・共創型」の組織づくりが、「顧客価値の追求」「変革への意欲」「組織の成長」を促進し、新時代に適応できる強い営業組織の基盤となっていくことでしょう。