執筆スピードを上げる習慣術

──ご多忙な中でたくさんの本を同時進行で書かれている、橋爪先生の執筆ルーティンを教えてください。

橋爪 12時過ぎには寝て、8時ぐらいに起きる。ちゃんと寝て、食事もちゃんと取る。きわめて普通ですね。寝る前には、「こういうことを解決しないといけない」という仕事上の疑問を考えて寝るようにします。そうすると、寝ているあいだに頭が勝手に考えてくれる。

 たとえば、今書いているものがあったとして、「その次、どう書こう?」みたいなことですね。考えても、そのことを、すぐ書けるわけじゃないでしょう。たとえば30ページ~50ページ書くとすると、5つか、6つのトピックを巡っていくわけじゃないですか。今、書いているのは、このトピックなんだけど、その次、その次の次……というように、ぼんやり考えながら、今のところを書いている。実は書いてみるまで、どうなるかわからないんですよ。

「伝わりやすい文章」を書くために必要なたった1つのポイント橋爪大三郎(はしづめ・だいさぶろう)
1948年生まれ。社会学者。東京大学大学院社会学研究科博士課程単位取得退学。大学院大学至善館教授、東京工業大学名誉教授。著書に『はじめての構造主義』『はじめての言語ゲーム』(ともに講談社現代新書)、社会学者・大澤真幸氏との共著に、『ふしぎなキリスト教』(講談社現代新書、新書大賞2012を受賞)などがある。最新刊に『死の講義』(ダイヤモンド社)。

 だから、「ここはほぼ書き終わったので、次、これを書こう」みたいなことを確認して寝るわけですね。

──橋爪先生は、1日何時間ぐらい執筆されているんですか?

橋爪 起きているあいだはなるべく。修士論文を書くときに、最後の章が、まだ書けてなくて、あと24時間しかないということになったときに、下書きなしで60枚、しかも、ワープロがなかったから手書きで書いたことがあったけど、あれは新記録でしたね(笑)。

 ワープロになってからは、書くのが楽になったし、スピードも速くなりましたね。

──執筆スピードを速くするコツは何でしょう?

橋爪 ややこしいことを、ややこしく書こうと思わないことですね。「こんなりっぱなことを書ける、りっぱな著者なんですよ」っていうふうに書かないことです。そういう意識がちょっとでもあると、難しい語彙や複雑な言い回しで書こうとしてしまう。そうすると、時間がかかるし、読むのも時間がかかる。見通しが悪くなるから、何を言っているのかもわからなくなる。自分でもわからなくなるんだ。

──世の中に出ている本には、そういうものが多かったのでしょうか?

橋爪 学術的なものは9割方がそうですね。文章がわかりやすいと批判しやすいんですよ。何を言っているかわかるから、間違っていたら、すぐに批判できる。でも、反証可能性があるということは、学問の基礎ですから、文章はわかりやすくなければならない。

 本質はアイデアなんだから、アイデアで勝負すべきであって、アイデアがあるかのように見せかけて、勝負するのはダメなんだ。

 「プレーン・センテンス」(シンプルで素直な日本語)で書くことにすれば、書くことに神経をほとんど使わないから、速く書ける。あ、文学は凝らないといけないんだけどね。でも、文学じゃない場合は、プレーン・センテンスで書けばいい。

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「伝わりやすい文章」を書くために必要なたった1つのポイント