2019年に中国で発生した新型コロナウィルス(COVID-19)は、2020年に世界中で大流行し、いまだに収束する気配がない。
日本政府はGo Toキャンペーンに熱心だが、季節が冬に向かうのに合わせて感染者が激増している。
ヨーロッパでは再びロックダウンに踏み切る地域も出てきた。
経済アナリストであり、歴史にも詳しい中原圭介氏は、この状態が長引く、あるいは収束してもすぐに次のウィルスが現れると読む。
つまり我々は、ウィルスと共存する時代を生きていかねばならないのだ。
我々はこの困難な状況の中でいかにして経済を立て直していくべきなのか?
中原圭介氏の最新刊である『疫病と投資』から一部を引用し、考えてみたい。

コロナ死亡者を激増させたアメリカの高額医療制度Photo: Adobe Stock

初診料3万円! 入院1泊20万円!

なぜCOVID‐19が欧米を中心に爆発的に拡大したのかについては、医療制度の問題が非常に大きいと考えられます。

日本に住む私たちのことを考えてみてください。ちょっと体調が悪いとすぐに病院に行く人は結構多いと思います。これは医療費が安いからです。なかには大した病気でもないのに救急車を呼ぶ人もいますが、同じことをアメリカで行ったら大変なことになります。

たとえば一般の初診料が300ドルと言われたら、どう思いますか。1ドル=107円で計算すると、3万2100円です。

救急医療センターに搬送されると10万円、入院は一泊の室料だけで2000ドルから3000ドルですから、これも日本円にすると21万円から32万円になります。

ちなみに今回のコロナ禍でアメリカのワシントン州で入院した70歳男性は、2ヵ月間の入院で奇跡的に回復したものの、治療費の請求額は112万2501ドル。日本円にして1億2010万円にもなったことが、ちょっとしたニュースになりました。

これだけ医療費が高額だと、病院にかかって病気を治したのは良いけれども、莫大な金額の医療費で借金漬けになる人も増えてしまいます。実際、2019年末時点でアメリカの人口の4割強に相当する1億3700万人もの人たちが、医療費の支払いを滞らせているという現実がありますし、個人破産した人たちの3分の2は、医療費を払えなかったことを理由にしています。

こうなると、病気に罹っても医療費を払えないので医療機関に行くのを断念してしまう人が増えてしまいます。アメリカの労働者はちょっと熱があるくらいでは仕事を休みません。熱を出して仕事を休むと、すぐにレイオフの対象にされる恐れがあるからです。だから、38度の熱があっても会社に行く。そして、周りに濃厚接触者をどんどん増やしていく。今回、アメリカでCOVID‐19の感染者数が爆発的に増えた背景には、医療費の問題があるのではないかと私は見ています。

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