2019年に中国で発生した新型コロナウィルス(COVID-19)は、2020年に世界中で大流行し、いまだに収束する気配がない。
日本政府はGo Toキャンペーンに熱心だが、季節が冬に向かうのに合わせて感染者が激増している。
ヨーロッパでは再びロックダウンに踏み切る地域も出てきた。
経済アナリストであり、歴史にも詳しい中原圭介氏は、この状態が長引く、あるいは収束してもすぐに次のウィルスが現れると読む。
つまり我々は、ウィルスと共存する時代を生きていかねばならないのだ。
我々はこの困難な状況の中でいかにして経済を立て直していくべきなのか?
中原圭介氏の最新刊である『疫病と投資』から一部を引用し、考えてみたい。
SARSの経験を生かした台湾
COVID‐19が世界的に広がりを見せるなか、それをうまく抑え込んだ国もあります。
2020年2月時点の台湾の人口は約2360万人で、感染者数は10月14日時点で529人。死亡者数はわずか7人です。これだけ感染者数と死亡者数を少なく抑えられたのは、蔡英文(さい・えいぶん)総統の指導力によるところが大きいと思います。
2003年にSARSを経験していたので、その時の教訓を生かすことが出来たのでしょう。水際対策として入国者の隔離を徹底し、医療用マスクを計画的に増産しました。
加えて民間の有能な人材を大臣に登用しました。たとえば唐鳳(オードリー・タン)デジタル担当大臣が、政府が市場のマスクをすべて買い上げて管理するシステムを確立しました。唐鳳デジタル担当大臣は、プログラマー・ハッカーであり、16歳でインターネット企業の立ち上げに参加、米企業アップルの顧問に就任するなどビジネス分野の人で、ITの専門家です。各々の大臣は、管轄分野について専門的な知識を持っている人がなるべきであることが、この件からもお分かりいただけるのではないでしょうか。
蔡英文総統が具体的にどのような対策を取ったのかというと、日本で厚生労働省に該当する「衛生福利部」の疾病管制署を中心に、省庁横断で設置された中央感染症指揮センターに強大な権限を与え、「伝染病防治法」という法律に基づいて学校を休校させたり、大規模な集会やイベントを制限させたり、交通機関を管理させるなど、国民生活の細部に至るまで徹底的な管理を行いました。
マスクの計画的な量産も、この伝染病防治法に基づいて国民生活を管理する一環でしたが、その結果、台湾国民は日本のようにマスク不足に悩まされることは一切ありませんでした。
もちろん国民生活にある程度の制限が加えられたのも事実です。政府の感染対策に従わない国民に対しては、かなり厳しい罰則規定が設けられました。たとえば海外から帰国した人が隔離措置に従わない場合は100万新台湾ドル、日本円に直すと360万円の罰金が科されました。ここが日本との大きな違いです。日本は、ヨーロッパ から帰国した人は野放しに近い状態でした。