サイドプロジェクトでメンバー間の「相互補完性」を見極める

 サイドプロジェクトの期間は、メンバーがビジョンを共有できるかの「カルチャーフィット」を見極めたり、強みやスキルをお互いに補え合えるかの「相互補完性」を見極めるタイミングでもある(下図表)。

「とりあえず」登記して会社を作ってしまうと、事務作業が発生しコスト(初期費用と運用費用)がかかるだけでなく、株の適切な分配ができないリスクも伴う。

 例えば、「学生時代の友人3人で始め、3分の1ずつ株を持っています」と恣意的に株を分割して始めるスタートアップがいる。だが、この場合、メンバーの一人でも離脱したら、その会社は無価値になってしまう。「仲が良い」というのは、「関係性の質」という意味では、有利かもしれない。

 しかし、それだけで成功するほど甘い世界ではないことを認識するべきだ。

 また、注目するべきファクトとして、スタートアップのファウンダーの71%が、定職に就いているときにアイデアが生まれているというデータもある。フェイスブックの創業者マーク・ザッカーバーグは、ハーバード大学在籍中に学生年鑑をウェブ上で閲覧できたら面白そうだという発想で友人たちとサービスを開始した経緯がある。

 Yahoo!(ヤフー)は、スタンフォード大学の学生だったジェリー・ヤンとデビッド・ファイロが授業の合間に作ったポータルサイトが原型だ。

 Y Combinatorの共同創業者、ポール・グレアムは「スタートアップのアイデアを得る最良の方法は、スタートアップのアイデアを考えようとしないことだ」という指摘をしている。これは、まだ発見されていないアイデアのヒントは日常生活や、普段行っている業務の中に潜んでいることが多いという意味だ。

 「当たり前だと思って普段何気なくしていること」を俯瞰して見れば、「そもそも、このやり方は最適なのだろうか?」「他のやり方もあるのではないだろうか?」という疑問がアイデアに結びつくことは多い。

 こうした日々の気づきや心の奥底で感じた本音(インサイト)を逃さずに突き詰めると、スタートアップの優れたアイデアにつながりやすい。