重い病気になろうとなるまいと、私たちは遅かれ早かれ死ぬのです。
自分がいつ他界しても悔いが残ることのないように毎日を生き切る。
これが私の言う心がまえです。その気持ち、つまり「決意」が自分の中に生まれたなら、「だったらもう少し、この世界で生きてやろう」という強いエネルギーが自然と生まれます。人間は意外と強いものなのです。
生き切るという意味では、人生の長さは問題ではありません。百歳で大往生した老人が称賛される一方、十歳の誕生日を迎えることなく亡くなった子どもには憐(あわれ)みが向けられる、これは大変おかしな話です。そもそも人生の価値は生きた長さで判断されるものではありません。短くとも人生を生き切った人にも「本当にお疲れさまでした」と労(ねぎら)いたいものです。
死は生物としての宿命ですが、死は同時に私たちの「次の生」のための出発点です。私たちの本質である「魂」は永遠不変の存在であり、肉体が滅んでも私たちの本質が滅びることはありません。
とは言え、今回の人生はこれっきりです。
次回はまったく違う人生を歩くことになります。そう考えると、今回の人生でやっておきたいこと、やるべきことが、皆さんそれぞれに浮かぶのではないでしょうか。悩みというのは、人生の途上で出会う私たちが解消(解決)しなければならないテストのようなものです。
悩みと上手に付き合いながら、今を楽しむ。今を楽しむことで、生きていることを実感する。これが人生で最も大切なことです。人生の醍醐味(だいごみ)と言っていいでしょう。
「悩まない」というテーマは一見、「言うは易(やす)く行(おこな)うは難(かた)し」のように
思われるかもしれませんが、実は誰にでも容易にできると思います。
あたりまえのことを、今さらながらやってみる。たったこれだけで毎日ががらりと変わることでしょう。
矢作直樹