経営者自身が、
会社自身のオリジナルストーリーを語れるか?
株式会社ユニコーンファーム 代表取締役社長
1978年生まれ。大学を卒業後、外資系のコンサルティングファームに入社し、経営戦略コンサルティングなどに従事。独立後は、日本で企業向け研修会社と経営コンサルティング会社、エドテック(教育技術)のスタートアップの3社、米国でECプラットフォームのスタートアップを起業し、シリコンバレーで活動する。日本に帰国後、米国シリコンバレーのベンチャーキャピタルのベンチャーパートナーを務めた。日本とシリコンバレーのスタートアップ数社の戦略アドバイザーやボードメンバーを務めながら、ウェブマーケティング会社ベーシックのCSOも務める。2017年、スタートアップの支援会社ユニコーンファームを設立、代表取締役社長に就任。著書に『起業の科学』(日経BP)、『御社の新規 事業はなぜ失敗するのか?』(光文社新書)、『起業大全』(ダイヤモンド社)がある。
また、優れた「ストーリーテラー」になるためにも「自分自身がなぜ事業に取り組むのか?」「なぜこの課題を解決するのか?」をはっきりと明文化して、他の人に伝えていくことが重要になる。
「Your story is Your strategy(あなた自身のストーリーがあなたの事業の戦略になる)」
と、アメリカの著名な投資家ベン・ホロウィッツは述べている。
経営者自身、あるいは会社自身のオリジナルストーリーをいかにして語れるかを考えることだ。
ユーグレナの出雲充氏は、学生時代にインターンシップで行ったバングラデシュで、米や小麦などの炭水化物はたくさんあるのに、肉、魚、卵、野菜、果物などの栄養源は圧倒的に不足していることに気づき、その食料問題を解決したいという思いが起業のきっかけになった。
トリプル・ダブリュー・ジャパンの中西敦士氏は、アメリカ留学時に道端で大便を漏らしてしまうという経験が人生を変えた。それがきっかけで超音波によって膀胱の変化を検知し、排泄のタイミングをスマートデバイスに知らせる機器「DFree」を開発する。「DFree」を導入する介護施設や病院の数は拡大を続けている。
こうした経営者自身の経験やフィロソフィーなどのストーリーがスタートアップにとって、何よりの武器になる(特に初期のスタートアップ)。
技術はマネできても、経営者の経験に裏打ちされたミッションに基づいて作られた商品やサービスは決してマネできないからだ。
経営者自身のストーリーを作るためには、「自己マスタリー」を身につける必要がある。自己マスタリーとはピーター・センゲが、その著書『学習する組織』(英治出版)で提唱した5つのディシプリン(訓練法)の一つである。組織を構成するメンバー一人ひとりが、自己の内発的動機にドライブされながら学習を深めていくことを意味する。
センゲが唱える「学習」とは、知識や情報の獲得ではなく、主に心の成長を指している。センゲはこの学習における過程を、「自分にとって必要だと思うことを達成できるように、自分自身を変革することである」としている。高いレベルの自己マスタリーを身につけることで、自分が望む成果を生み出すための能力を、継続して伸ばしていくことが可能であるとしているのだ。
変化の激しい状況下でも成果を出し続けるリーダーは自己マスタリーを身につけ、自己認識の能力が非常に高い。自己認識には内面的な自己認識と外面的な自己認識があり、両方を高いレベルで身につけることが必要だ。その認識によって、生み出された思いが自社のミッションの土台になり、会社のDNAになっていくのだ。