累計38万部超のベストセラー『餃子屋と高級フレンチ』シリーズでおなじみの著者・林 總氏の最新刊『たった10日で決算書がプロ並みに読めるようになる! 会計の教室』が9月29日にダイヤモンド社から発売になりました。本連載では、同書の中から抜粋して決算書を読み解くために必要な基本の知識をお伝えしていきます。登場人物は、林教授と生徒の川村カノンの2人。知識ゼロから始めて、いかにして決算書を読み解くスキルを身につけていくのか? 川村カノンになったつもりで、本連載にお付き合いください。
他人資本と自己資本の違い
カノン 先生、それからもう1つ教えてください。他人資本と自己資本は別々のお金と考えていいのでしょうか。
林教授 別々のお金? なぜそう思うんだね。
カノン だって、他人資本は返さなくてはならないお金で、自己資本は返す必要のないお金ですから。
林教授 年利率20%のカードローンで借りたお金も、君がお父さんからもらったお金も、お金はお金だ。使い道に制限はない。
カノン そうか! 借りたお金もお給料も、サイフに入れたら区別できませんものね。
林教授 資金を調達する際の条件が異なるんだよ。いい機会だから2つの相違点を整理してみよう。第一に返済義務があるかないかだ。他人資本(負債)は返済義務があるが、自己資本にはない。第二に他人資本は利息がかかるが、自己資本にはかからない。
カノン 買掛金にも利息がかかるのですか?
林教授 仕入代金には、ごくわずかだが利息が上乗せされている。
カノン そうなんですね。知らなかった。
林教授 同じ他人資本でも、銀行からの借入金は契約によって返済期限と支払うべき利息が決まっている。このような他人資本を有利子負債という。
カノン 有利子負債って、会社がどんなに苦しい状態でも、元金と利息を銀行に支払わなくてはならないのでしょうか?
林教授 もちろんだよ。たとえ会社が潰れかけても、銀行は容赦なく取り立てる。
カノン 『半沢直樹』の世界ですね。業績が良い時にはニコニコしていた銀行員が、悪くなると一転して鬼になるシーン。見ていて憤慨しちゃいました。あれって本当なのですね。
林教授 ドラマである以上大げさな描写もあるだろうね。だが銀行は商売としてお金を貸しているし、そもそも会社を窮地に追いやった責任は経営者にある。
カノン 先生は、あのドラマの銀行の対応に抵抗がありますか?
林教授 微妙な質問だね。しかし、銀行はボランティアではない。誠実な経営者は従業員を路頭に迷わすようなことはしない。
カノン とすると、会社を倒産に追い込んだ経営者のどこがいけないとお考えですか?
林教授 もっと会計を学ぶべきだ。会計情報を武器にできないのでは、経営者失格だね。
カノン 父も失格ですかね。
林教授 さて、どうだろうね。