この資金がないと販売店は活動を維持できないが、販売店が独自の収益源を開拓できれば、手数料を削減できる。ドコモは値下げプランとほぼ同じタイミングで、全国のドコモショップにおいて「アプリ設定サポート」を開始すると発表している。これは、利用者が機種変更する際、LINEやメルカリ、ツイッターなどのアプリ設定を有償支援するというもので、1アプリあたり1650円という料金が設定されている。

 日常的にスマホをいじっている人にとっては、アプリのインストールなど何も考えなくてもできるだろうが、高齢者を中心にスマホの設定に苦労している人は多い。ahamoのプランはネット完結型で、ドコモショップでのサポートは受けられない仕組みになっているので、ドコモショップへの来店者数は減る可能性が高く、販売店の人員には余裕が出てくる。

 販売店において、高齢者などに対する有料サポートを強化すれば、販売店の収入が増えるので、通信会社からの手数料を削減できる可能性が見えてくる。この場合は、サポートを受けた顧客がコストを負担するという話なので、ある程度の公平さも担保できるだろう。

NTTが旧電電公社に先祖返り?
ドコモ以外の各社の心配材料とは

 しかしながら、こうした方策にも限度があるため、やはり各社の収益は悪化する可能性が高い。こうした中、ドコモ以外の各社がもっとも心配しているのがNTT東西の動向である。

 携帯各社は今後、次世代通信規格5Gの整備を積極的に進めていく必要があるが、5G整備のカギを握っているのが光ファイバー網であることは説明するまでもない。

 NTTはもともと電電公社という官営の独占企業だったので、他社と比較して設備面で圧倒的に有利な立場にある。NTT東西は全国の光ファイバー網の75%を握っているほか、ほぼすべての市区町村に巨大な設備(旧電話局)を保有している。NTTがドコモを完全子会社化することで、ドコモに対して有利な接続条件を提示することが可能になってしまう、と競合企業は懸念している。

 そうなると5Gのサービスにおいてはドコモが圧倒的に強い立場となり、ドコモに価格決定権が集中するという事態も生じかねない。

 本来、電電公社の民営化と分割は、適正な競争によってサービス維持と価格引き下げを実現するという国策に基づいて行われたものであり、その意味では、今回の値下げ要請とドコモとの一体化は、従来の通信政策に逆行するものといえる。独占に近い状態となり、利用者による価格決定権が奪われてしまえば、最終的には国民がコストを負担するということにもなりかねない。

 政府は、NTTが巨大な独占企業にならないよう、適切な競争環境の維持に留意する必要があるが、強い値下げ要請を行っている立場ではそれも難しいかもしれない。

訂正 記事初出時より以下のとおり訂正しました。
29段落目:NTTは全国の光ファイバー網の75%を握っているほか、ほぼすべての市区町村に巨大な設備(旧電話局)を保有している。理屈上、NTTはドコモと一体化することで、ドコモに対して有利な接続条件を提示することが可能になってしまう。→NTT東西は全国の光ファイバー網の75%を握っているほか、ほぼすべての市区町村に巨大な設備(旧電話局)を保有している。NTTがドコモを完全子会社化することで、ドコモに対して有利な接続条件を提示することが可能になってしまう、と競合企業は懸念している。(2020年12月18日16:06 ダイヤモンド編集部)