解析対象者はWHSに1992~1995年に登録された2万5,317人(平均年齢52.9±9.9歳)。登録時の自己申告による食事摂取状況から判定した地中海食スコア(MEDスコア)をもとに全体を以下の3群に分類した。MEDスコア0~3点9,873人、4~5点9,184人、6~9点6,260人。なお、MEDスコアが高いほど、より望ましい地中海式の食事パターンであることを表す。
平均19.8±5.8年の追跡期間中に2,307人が2型糖尿病を発症した。2型糖尿病発症に影響を及ぼす因子(年齢、摂取エネルギー量、喫煙・身体活動習慣、閉経状態、ホルモン補充療法など)を調整し、MEDスコア0~3点の群を基準に発症リスクを検討。すると、6~9点群のハザード比(HR)は0.70(95%信頼区間0.62~0.79)となり、3割の有意なリスク低下が認められた。
この結果について、研究には関与していない米レノックス・ヒル病院のMinisha Sood氏は、「地中海式食事療法が2型糖尿病発症リスクを下げるという結果は全く理にかなった結論だが、それが長期間にわたり追跡されたデータから証明された。食事療法の原則を改めて示した研究と言え、次々に現れる新しい食事療法が“特効薬”ではないという考え方を支持するものだ」と述べている。
なお、今回の研究では、2型糖尿病の発症に強い影響を及ぼすBMIを調整因子に加えた解析も行っている。その結果はHR0.85(95%信頼区間0.76~0.96)であり、リスク低下は引き続き有意だった。ただし、BMI25以上と未満に二分し解析した結果、25未満の群はHR1.01(同0.77~1.33)で、有意でなかった。
また、2型糖尿病発症リスク低下への寄与の程度を解析すると、インスリン抵抗性が低いことが最も強く影響していることが明らかになった。Sood氏は、「地中海式食事は欧米の一般的な食事よりも食物繊維が豊富であり、食物繊維が豊富な食習慣の人のインスリン抵抗性が低いというデータは妥当なものだ」と述べている。なお、寄与率の2位以下は、BMI、HDL-コレステロール、炎症と続いた。
一連の結果について、米ノースウェル・ヘルスのShuchie Jaggi氏は、「サンプルサイズが大きく、最長25年間に及ぶ調査の結果であり、50歳以上の女性にとって有意義な研究と言える」と評価。ただし、いくつかの限界点を指摘している。食習慣が研究登録時のみの自己申告により評価されていること、および、対象者が主として教育レベルの高い白人女性であるため、他の集団でも同様の結果を得られるとは限らないといった点だ。それでも同氏は、「ランダム化臨床試験ではないとは言え、地中海式食事療法が長期的な心血管代謝リスクの改善につながることが示された」と語っている。(HealthDay News 2020年11月24日)
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