グーグルは「ネット検索の企業」ではなく
「世界最大の広告代理店」

 グーグルは検索エンジン「Google」をはじめとする広範囲なサービスやアプリ、ハードウエアを通して収集したビッグデータから、さまざまな「インサイト」を抽出し、それをほかの企業に販売している。そうした情報を購入した企業は、より的確なマーケティングやターゲット広告の展開を図れるようになる。つまりグーグル社は、ある種の、そして世界最大の「広告代理店」なのである。同社の2019年の収益「1620億ドル弱」のうち、約84%にあたる「1348億ドル」は、そうした広告プラットフォーム事業からもたらされているのだ。

「情報」が特定の個人とはひも付けされず、匿名化されたとしても、自分の検索履歴やグーグル傘下の「YouTube」の視聴履歴、「Gmail」や「Google Docs」の連絡先や使用情報などが目に見えにくいところで利用され、収益化されているとすれば、心中穏やかではいられない。

 グーグルは、利用者が個人情報の共有設定を変更できるようにしているというが、大多数の人はそれを気にとめておらず、詳細を確認している時間や気力もないといえる。

 たとえGoogleなどで検索や利用履歴を残さないようにしても、利用時にリアルタイムで収集されている情報に関しては、ほとんどなすすべがない。例えば「Google Map」のナビ機能を使うと、刻々と変化する渋滞状況が表示される。便利に思えるこの機能も、各スマートフォンの位置や移動速度をグーグルがリアルタイムで収集しているからこそ実現できているのだ。

人気アプリで取得されている
膨大なプライバシー

 一方でアップルは、以前(2018年10月3日)から「App Store」(アプリのダウンロードサービス)に登録されるすべてのサードパーティーアプリ(アップル以外の企業や開発者が開発したアプリ)に対して、アプリごとのプライバシーポリシー(どういった個人情報がどのように利用されるかの一覧)を同社に提出するよう義務付けていた。そして、最近になってさらにプライバシー保護の姿勢を強めている。

 すなわち、2020年12月8日以降に新規登録、または更新されるアプリに対して、App Store内のすべてのアプリの説明ページに「プライバシーポリシーを明記すること」を必須としたのだ。これはApp Store内の各アプリのページを開いて、下方向にスクロールすると表示される。

プライバシーポリシー「App Store」でのアプリ説明ページにプライバシーポリシー明記を義務付けた告知。Apple Developerより

 App Store内に並ぶ「Amazon」「Facebook」「TikTok」「LINE」といったアプリも、すでにプライバシーポリシーを公開しているが、これらのアプリが収集・利用している個人情報は、想像以上に多岐に渡る。下記の図は、普段頻繁に使うであろう4つのアプリのプライバシーポリシーのリストを並べたものだ。いずれもそれなりの種類の情報を収集していることがわかる。

LINELINE
TikTokTikTok
amazonAmazon
FacebookFacebook

 以下のように、4つのアプリのプライバシーポリシーのリストを「収集される個人情報の項目が多い順」に左から並べてみると、とくに「Facebook」が突出して多いことがわかる。

4つアプリのプライバシーポリシー4つのアプリのプライバシーポリシーのリストを並べたもの

 しかし、アップデートのタイミングの都合か、原稿執筆時点ではApp Store内に並ぶグーグルの各アプリは未対応だった。いずれにしても、アプリのアップデート時にプライバシーポリシーの明記を拒めば、App Store内で公開できなくなるため、最終的にはグーグルも対応するものと思われる。

 たとえば、アップルの純正メッセージングアプリの「iMessage」などは、必要最小限の情報(メールアドレス、電話番号、検索履歴、デバイス ID)しか取得せず、それを他の企業と共有することもない。メッセージの内容は当然、アップル自身も知ることができないよう、暗号化されている。

 もちろん、個人情報の収集のすべてが悪と言いたいわけではない。しかし利用者の立場からすれば、少なくとも「自分の個人情報がどのように使われるのか」を把握した上で、そのアプリ使用の可否を決めたいものだ。

 アップルがプライバシー保護の姿勢を強めた意図も、「プライバシーの収集が多いアプリを排除するため」という短絡的な目的ではなく、プライバシーポリシーを利用者にわかりやすく提示することで、利用者自らがそのアプリの可否を判断できるよう、仕組みを整えている点にある。

 当然、アップルのこうした措置を嫌って、App Storeから撤退する企業や開発者も現れるだろう。しかし後ろめたいことがなければ、個人情報の収集について明記することに何の問題もないはずだし、それを知ることは利用者にとっては当然の権利である。「アプリを無料で提供しているのだから、収集した個人情報をほかの企業に販売するのは当然だ」と考えているのであれば、そもそもそうしたビジネスモデル自体に問題があるともいえる。

 アップルとしては、サードパーティーに対して、(個人情報をほかの企業に売ることなく)適切な対価で販売できるような「価値あるアプリ」の開発や、収集した情報の適正な利用を促すことで、アプリビジネスの健全化を実現しようとしているのだ。