マネーサプライを見る
ドルと金が逆相関で動くという点を踏まえると、今後の金価格を考えるためには、ドルの値動きを見ることが大事といえます。
ドルが下落し、金価格が上がるタイミングとしては、前述したテロや自然災害のような有事が挙げられるでしょう。
ただ、有事を予測することはできません。
そこで注目したいのがマネーサプライ(日銀の資料などではマネーストック)です。
マネーサプライは、世の中に出回っているお金の供給量を指すもので、各国の中央銀行が供給量を調整することによって景気をコントロールします。
「3つ目の理由」でも説明したとおり、市場で取引される商品の価格は供給量が増えることによって下がります。
ドルも同じで、マネーサプライが増えるとドルの価値が下がりやすくなり、逆相関で動く金価格は上がりやすくなります。
その例といえるのが、リーマンショック後のFRB(アメリカの中央銀行)による量的緩和政策です。
FRBは、銀行から長期国債を購入する方法などによって市場に出回るドルを増やしました。
その結果、供給量の増加によってドルの価値が下がり、リーマンショックによるアメリカ経済への不安もあり、ドル安が進みました。
一方、金価格は大きく上昇し、ドルの量的緩和が続く間、一方通行で急騰していくことになります。
同じことが、コロナショックでも起きています。
FRBは、コロナショックがアメリカ経済に与える影響を抑えるために無制限の量的緩和を行い、リーマンショック後よりも早いペースでマネーサプライが急増しました。
2020年5月時点で前年比+23.1%と、1960年1月の統計開始以来で最も高い伸び率を記録しました。
この動きに反応して、金価格は急騰し、直近の高値だった1800ドルを超えていくことになったのです。